コラムNo.108 社長の思い付きがスタッフを腐らせる

 店舗ビジネスには様々な職種があります。思いつくままに挙げると、営業、販売、バイヤー、ホールサービス、料理人、理美容技術者、マッサージ施術などなど、兼務されるものもありますが、多種多様な職種が存在します。

 

 人材育成を仕組みとして動かしていくには、自社の職種を整理することも重要な要素の一つです。自社にはどういう仕事があって、どういう知識、能力が必要で、求められる成果は何なのか。創業当初であれば、すべて経営者がおこなってきたものが、だんだんと軌道に乗るにつれ、人が増え、一つ一つの仕事も複雑性が増し、分業をする必要が生まれてきます。

 

 この時、社内の仕事を整理整頓することもなく、流れに身を任せていると、だれが何の仕事をしているのか、仕事の意味すら失われ、業績も悪化する恐れがあるのです。

 

 まずは職種で分け、その後職務に細分化することで、既存社員も理解度が進み、新入社員にも格段に教えやすくなります。社内の仕事内容やレベルを決めていくことはなかなか大変ですが、一度まとめておくと、都度修正することで対応できますので、ぜひやってみることをお勧めします。

 

 細分化した職務によって、報酬体系を整え、有機的につなげることで人材育成の仕組みの基盤となります。職務に求められるレベルと社内の等級を組み合わせることで、スタッフの成長が見えるようになるのです。スタッフ自身も目指す目標の一つとして認識しやすく、周囲との良い競争も生まれます。

 

 「あまり細かく管理しても…」という声が聞こえてきそうですが、どうやったら給料が上がって、どうやったら昇進できて、どうやったら権限が与えられるのか、などが最初から分かっていないと、誰もそんな会社では働きたがりません。そもそも、あまり細かく…などという経営者は全く管理していない場合がほとんどです。

 

 私は「社長の鶴の一声方式」と呼んでいますが、これをやられると現場のスタッフにとってはたまったものではありません。思いついたかのように、明日から店長、料理長、マネージャーなどと言われても、言われた本人たちは何をどうしていいのか全く分からないのです。

 

 仕事の内容も求められる成果も決まっておらず、ただ職務だけが言い渡される…。「おまえならやれる。頑張れ。」最初は訳も分からずテンションが上がって動き回っても、すぐに疲弊し、立ち止まります。現場のスタッフたちもよくわかっておらず、困惑し、面倒くさいものを見るような視線で対応し、店舗の雰囲気も悪くなっていきます。

 

 そして一言「お前には期待していたんだけどな…」と社長がとどめを刺し、思い付きで任された社員は失望して退職します。これはよくある事実であり、本当にもったいないと思います。当コラムをお読みの経営者の皆さんは、まず簡易的なものでもいいので職業、職務、等級を整理してください。それだけで定着率は上がります。