コラムNo.127 現場が大好きな社長の弊害

 

 店舗ビジネスの経営者は、もともと自身が現場で修業を積み重ね、そこから徐々に店舗を大きく、さらに2店舗。3店舗と多店舗化していき、段階的に経営者としての道をたどる方が多いのではないでしょうか。

 

 私もそのタイプの経営者として現場経験を培ってきました。このことは、店舗ビジネスの基本中の基本である「現場の熟知」という意味でも、またその「知」を「ノウハウ化」する過程においても重要な、切り離せない要素となります。

 

 さて、ここで「ある問題」が発生します。経営者が現場を卒業できないのです。現場が、そしてお客様と接することが好きすぎて、自分が率先して接客、店舗業務を行ってしまうのです。そのこと自体は必ずしも悪いこととは言えませんが、すでにスタッフを何人も抱え、数店舗を持つような状況であれば、ほぼ必ずマイナスに作用します。

 

 つまり、人が育たないのです。経営者は楽しいルンルン気分で業務を行いますが、そこにいるスタッフはヒマになります。接客技術も、サービスレベルも上がることはありません。経営者が店に入らないときは、当然ながら店舗のすべての業務レベルがガタ落ちします。

 

 翌日、経営者は「なにをやっているんだ!」と現場スタッフを叱責します。そして経営者がまた率先して業務を行い、スタッフはそれを見ている… で、経営者が入れないときは…以下繰り返し。

 

 究極的には、経営者が現場で作業を行ってはダメです。それは経営者ではありません。店長でもありません。アルバイトと同じです。いや、アルバイトよりもたちが悪いです。店を潰す可能性もあります。経営者がすべきは、目の前のお客様にセールスをすることではないのです。勘違いしてはなりません。

 

 経営者のセールススキルは社内の誰よりも高く、断トツなのは当たり前の話です。それをこれ見よがしに現場で使うのは賢くありません。そのセールススキルをノウハウ化し、スタッフへと伝授していくのが経営者の重要な仕事の一つです。それを嬉々として自分が自分のために接客サービスを行うような経営者がいる店舗は絶対に長続きしません。

 

 視点を変えれば、スタッフを自社の顧客にすることが経営者の仕事とも言えます。そのためにはスタッフに対して経営者がお客様と同じように接することが必要となります。スタッフに対してセールスをすること(モノを売り込むことではありません)、つまり商品やサービスの良さをアピールすることは経営者の仕事の一つなのです。

 

 それに感化されたスタッフがお客様に経営者と同様の熱い想いを伝える。この流れを続けていくことで店舗の成長を促していくことができます。経営者の独りよがりの自己満足で、長続きした試しはありません。

 

 経営者の皆さん。

現場の中心になっていませんか?

スタッフの仕事を取り上げていませんか?