コラムNo.131 思いつきサービスが店をダメにする

 重要顧客を差別化、つまり依怙贔屓することは、店舗ビジネスにとって重要な戦略となります。戦術ではなく「戦略」と言えるのは、現場において「思いつきサービス」を提供することが差別化とは全く言えず、最初から提供されるべきサービスとして、社内の資源配分を考え抜かれて設計されていなければならないからです。

 

 「いつものあの方がいらっしゃったから、とりあえず今日はこれをサービスしておこう」というのは、差別化戦略ではなく、単なる「思いつきサービス」です。何とかおもてなししようという気持ちはよいのですが、それが店の首を絞めることにもなりかねません。

 

 どういうことかと言えば、このまま各自が勝手に「思いつきサービス」をすると必ずスタッフによって差が生まれます。お客様としては、いいスタッフに当たればラッキーですが、そうでなければ間違いなく損をした気分になります。さらに厄介なのは、同じスタッフでも日によって、時間によって提供する「思いつきサービス」のクオリティがバラバラになる点です。

 

 「思いつきサービス」というくらいですから、思いついて行うことになり、一定のレベルは担保できません。お客様からすれば、そのギャップを毎回感じさせられることになり、満足度は急激に下がることになります。

 

 ここで、私の経験上「満足度」があまり経営者の皆さんに理解されていないことが多かったため、ついでに解説をしておくと、「満足度」の目盛は「相手の期待値」です。つまり、満足度とは「相手の期待値をどれだけ超えたのか」ということであり、満足度を向上させる大前提として相手の期待値をしっかりと把握することが最重要なのです。

 

 相手の期待値は「来店のきっかけ」からある程度把握できます。「いつも通勤で前を通っていて、看板の写真がおいしそうだったから」「ここは施術がすごく上手だって聞いたから」「中のお客さんがすごく楽しそうに飲んでいたから」「チラシで見てすごくお得だったから」

 

 つまり、店側が意図的かどうかは別にして、「発信している情報」がお客様にとっての期待値となるのです。このことから、期待値はその大部分が実はコントロール可能であり、店舗ビジネスにおいて「期待値のコントロール」は非常に重要な考え方となるのが理解できると思います。

 

 ここで「思いつきサービス」に話を戻すと、毎回違うサービスというのは、お客様にとって期待値の目盛がブレにブレることと同義です。期待値を大幅に超えてくる場合もあれば、怒りを覚えるくらい劣悪なサービスの時もあり、何を期待していいのかわからない状態となるのです。

 

 この状態は、裏を返せば「何も期待できない」、言い換えれば「店に行く理由がない」ということになり、誰が考えても自然と足は遠のいていくことになります。

 

 店舗ビジネスは「思いつきサービス」だけでやっていけるほど簡単ではありません。期待値を知り、期待値をコントロールしたうえでサービスを戦略的に設計していくことがどんな形態の店舗でも必要です。特に繰り返し使っていただく顧客へのサービスは綿密に練られている必要があるのは言うまでもありません。

 

さて、店舗経営者の皆さん。

 

「思いつきサービス」を励行していませんか?

それが客離れを起こしていることに気が付いていますか?