コラムNo.148 店舗崩壊のきっかけ

 

 店舗ビジネスの人材育成について、現場でのOJTは不可欠です。経営者の方で、On the Job Trainingの頭文字をとったこの訓練方法を知らない人はいないと思います。要は仕事を与えながら教えるという、ただそれだけのことなのですが、これがなかなか難しい。

 

 実際にやってみればわかります。現場では当然お客様が存在し、常に本番です。その緊張感の中で「素人同然のスタッフ」を教えながら実務をさせるのですから、トレーナーからすると相当な負担となります。また、トレーナーとしてだけ仕事ができればいいのですが、大半の場合、兼務しているため膨大な業務量となってしまうのです。

 

 そもそもトレーナー職が設けられていない会社も多く、じゃあ誰が教えるのかと言うと「その時空いている先輩スタッフ」にその役が回ってくることになります。当然のことながらみんなやりたがらず、気が乗らない仕事について全力でやるスタッフは稀です。結果として、適当に教えられた仕事のできない新人が出来上がり、社内ではその劣化コピーが続いていくことになります。

 

 仮にトレーナーがいたとしても、その実力次第でスタッフの育ち方が変わることは日常茶飯事であり、店舗ビジネス経営者にとって「トレーナーの育成」も含めたOJTを仕組み化することは喫緊の課題となっています。

 

 OJTの仕組み化に際しては、店舗の業務が標準化されておらず、「教える人によってやり方が変わる」という冗談みたいな状況が大きなネックとなっています。「人に教える前に業務の標準化をする」という当たり前のことが、驚くほど多くの会社ではできておらず、またやろうともしていないのです。その弊害は計り知れません。

 

 新人が育たないのは当然として、ベテランスタッフもそれぞれ自由に業務を行っているため「トレーナー役」になった時は自己流を押し付けます。新人はスタッフの皆が違うことを言うので、どうしていいかわからず混乱し、仕事も上達せず、結果として仕事が面白くなくなり退職の可能性が高まります。

 

 顧客にとってもいい迷惑です。いつ来店してもサービス内容が変わり、不満がたまっていきます。そして大半の顧客は「違う店」を選びます。結果はご想像の通り、売上は減少し、ベテランスタッフは辞め、そのことでさらに売上が… そして最終的に‥

 

 人に教えることができるのは、「型があること」です。店舗ビジネスでいえば、「業務の標準化およびマニュアル化」が型であり、それがなければ人に教えることは不可能なのです。「こんな簡単な業務わざわざマニュアルにしなくてもいいだろう」と思っている経営者の方。そこから会社の崩壊は始まります。