コラムNo.182 経営理念は変えてもOK?

 

 「経営理念って変えてもいいんですか?」

 先日、とある経営者の集まりにて事業計画セミナーをさせていただきました。ここのところ公的機関や経営者団体からお話をいただき、同様のセミナーをする機会が増えています。事業計画については、皆さんもセミナーあるいは本などでご存知の方が多いのではないでしょうか。1~3年程度の期間で、売上目標やアクションプランをまとめたものですね。冒頭の台詞はそのセミナー参加者から出された質問です。

 

 事業計画を作成する際、避けては通れないのがいわゆる「経営理念」です。ざっくりと言えば、経営理念とは「経営者の思い」です。言葉の定義は辞書の数以上にあると思われますが、私が考える経営理念とは「経営者の思い」すなわち「何のために経営しているのか」が成文化されたものです。つまり会社の価値基準であり、これがなければ経営が大きくブレる恐れがあります。

 

 ところが、経営理念を成文化している会社は驚くほど少ないのが現状です。私の体感値では、世にある会社(個人事業も含む)の8割は理念を作っていません。事業計画は言わずもがなです。売上目標すらない会社も非常に多く存在します。要するに大半の会社は思いつきで行き当たりばったりな経営(とも言えない)を行っているということです。

 

 では経営理念(ミッション、ビジョン、バリューなど…)や事業計画、売上目標があれば優れた業績が残せるのか、というとそうでもないのが実情です。むしろ何も作らず、数字もろくに把握しないまま、野生の勘だけでガンガン突き進んでいって成功している経営者もいます。

 

 ただし、です。野生の勘だけで成功しても、ほとんどの場合一時のものになります。単にラッキーで上振れしただけで、継続性も再現性もなく、宝くじを買ったらたまたま当たったようなものと言えるでしょう。

 

 さて、ここで冒頭の質問に戻ります。皆さんはどう思いますか…?経営理念は変えてもいいのでしょうか?そもそも経営理念を作っていない経営者が多い中、せっかく作った理念を変えるくらいだったら作る意味がないんじゃないか…

 

 いろいろな考え方があると思いますが、私の考えを申し上げます。まず経営理念は作ったほうが良いでしょう。そして作った理念は変えても問題ありません。これが答えになります。

 

 まず理念を作ったほうが良い理由は何でしょうか。一つは自分自身の説得のためです。これは自分の思い、つまり経営理念があるのであれば、成文化しておくことで自分の頭の中だけにふわふわと浮いている思いが目に見える形になり、自分自身が説得され、ゆるぎない自信となるからです。もう一つの理由は、顧客や従業員など周囲にも自身の価値観を浸透させるためです。要はどんなに近い人でも「言わないとわからない」のであり、「言わなくてもわかるだろう」は単なる甘えです。そして価値観が広まれば仲間が集まりやすくなり、その分成功へと近づきます。

 

 次に経営理念を変えてもいいのはなぜでしょうか。もちろん前提として、毎年変わるような理念はあり得ません。しかし10年や20年経つと社会のルールや人々の価値観、技術の進展などあらゆるものが変化し、同時に自分自身の価値観や思いも「必ず」変化します。むしろ変われなければ成長はおろか生き残ることすらままならないでしょう。このため、経営理念をよりよくアップデートすることは必然とすら言えるのです。

 

 経営者の皆さん。今、経営理念をお持ちでなければ、ぜひ思いを言葉にして作ってください。そんなにかしこまらなくても大丈夫です。まずは簡単な言葉で構いません。言葉にすることで自分自身が説得され、より自信をもって意思決定をすることができるようになります。