コラムNo.187 話を聴くということ

 

 私の経験上、基本的に経営者はお話し好きの方が多いと感じています。私自身は聞くことが好きなので何時間でも聞いていられますが、その内容がポンポンとあらゆる方面に飛んでいくことが多く、黙って聞いていると本当に1日が終わってしまいます。例えば、たった今得意先に送るお中元の話をされていたかと思いきや、コロナの話に飛び、そして売上の話に移ったと思ったら、今度はご自身の体調の話、さらにはご家族の話、次いで他社の話…

 

 いくら聞くことが好きでも、これではお互いの時間が浪費されてしまいます。したがって、ミーティングの効率を高め、成果につなげるための軌道修正をほぼ毎回行う必要が出てくるのです。いかにテーマを決めて話していても同様の状態になりますので、ミーティングにおける軌道修正力は、我々コンサルタントや経営者と直接関わるお仕事の方々にとって、もっとも重要なスキルの一つと言えるでしょう。

 

 ただし、ここで難しいのは、単に機械的な軌道修正をすると相手にとってフラストレーションがたまってしまい、気持ちよく話せなくなる状態を引き起こしてしまうのです。饒舌だったものが一旦途切れてしまうと、それまでの勢いがなくなり、雑談に絡む重要な部分が引き出せず、底の浅いミーティングになる可能性もあります。この点、コミュニケーションと言う意味では、我々コンサルタントだけではなく、誰であっても常に注意すべきところだと感じています。

 

 一方、経営者の方々にお聞きしたいのですが、社員とのミーティングについてはどうでしょうか。「ミーティングなんかしていない」と言う方は置いておいて、通常は少なくとも月1回程度のミーティングの場を持たれているはずです。その際、しっかりと社員の話を聞いているでしょうか。

 

 「しっかりと聞いているに決まっているだろう」という意見もあるかと思いますが、果たして実態は… 経営者自身は聞いているつもりでも、自分が話したいことを話すだけで、社員からはろくに何も聞きもせず、単なる業務連絡、あるいは指示命令の場になっていないでしょうか。

 

 上記の例は非常によくあるパターンで、実際は情報の共有すらできていない会社も多々あります。これは何も経営者と社員だけに言えることではなく、例えばマネージャーと店長、店長とスタッフなどの関係でも当てはまります。

 

 「伝えているつもり」「聞いているつもり」が積み重なり、立場による情報格差が生まれ、結果的に社内がバラバラになってしまう… このように、誰も望んでいないのに、最悪の状態を招いてしまっている会社は本当に多く存在します。

 

 これに対する処方箋はひとつです。上の立場の者が「聴く」に徹することです。あえて「聴く」としたのは、聞く(ヒアリング、受け身)ではなく、聴く(リスニング、能動的、心から)ことが重要だからです。

 

 ミーティング全体の8割は聴き、2割話す。まずはここから始めましょう。驚くくらい、あっという間に関係性が変わります。テクニックなどなくても構いません。一生懸命聴くことが最も重要なポイントなのです。話が飛んで「軌道修正」する必要があるのは、お互いの理解が深まった後の話だと認識しておきましょう。