コラムNo.192 成功事例の活かし方

 

 先日、あるサービス業の店舗経営者の方とお話しする機会がありました。その会社の業績はここ数年、落ち込んではいないものの、目立って伸びてもおらず、いわゆる成熟期に入っている状態です。

 

 社長とお話を進めていくうちに、様々な課題が見えてきました。中でもとりわけ、店舗型ビジネスではほぼ100%出てくる課題「人材の採用と育成」が、当社もご多分に漏れず最重要課題となっているとのこと。

 

 それを受け、課題に対する「他社の成功事例」をご存知かどうか聞いたところ、知らないことはないが、そのまま同じやり方をマネしても同じようにうまくはいかないので、特に何も取り入れていないとの回答をいただきました。

 

 これは一面にはその通りで、成功事例の単なる表面上のコピーをしても絶対にうまくいきません。ただし、全く無駄な情報かと言うとそうではなく、その活かし方にポイントがあります。

 

 他社のやり方をマネして失敗する一番の理由は、自社に合わないものをそのまま移植するから、つまり「拒絶反応」が起きるからです。

 

 すべての店舗や会社は置かれている環境も社内の状況も異なります。似ていても全く同じ会社は存在しません。例えば同じ喫茶店と言う業態でも、客層も、スタッフの接客スタイルも、商品も、当然内装や立地も、創業年数も、経営者の好みも、何もかもが違います。

 

 それぞれに合うやり方が異なるのは当然で、他で上手くいったからウチでもそのままいけるだろうと言うのは、冒頭の社長が言う通り、非常に安直な考え方です。

 

 それでも私が「他社の成功事例」を聞くのは、そこに大きなヒントが隠されているからです。何も考えずに聞いていれば、よくあるうまいやり方程度で思考がストップします。これはうちには合わないし参考にならない…あるいは、面倒くさいから丸パクリしよう…といずれにしても失敗パターンに一直線となります。

 

 そこで登場するのが活かし方のポイントである「抽象化」と「具体化」です。抽象化は共通項でまとめること、具体化はまとめたものをわかりやすく分解することです。

 

 ここで簡単な例題です。ある会社では社員旅行を始めたら定着率が向上しました。別の会社では飲みにケーションを復活させたら定着率が向上しました。また別の会社では社内運動会を始めたら定着率が向上しました。

 

 さて、あなたの会社の定着率が良くなかった場合、社員旅行、飲み会、運動会をすべて、あるいはいずれかをやってみようと思いますか。それともうちの社内風土には合わないし、効果がなさそうだといってこの情報をまったく無視しますか。少し立ち止まって、考えてみましょう。

 

 社員旅行、飲み会、運動会の共通項は何でしょうか。私は「社外で社員との適度なコミュニケーションを取る場」だと考えます。その上で、自社に合うやり方は何だろうか、と具体化していきます。考えを進めていくと、実は大々的にイベントをやる必要がないことに気が付きます。普段から社外で話を聴く機会を設ければいいじゃないか、と。

 

 そこで、例えば部下にとって安心安全で話しやすい社外の場(ホテルのラウンジとか…)をつくり、上司は徹底的に聴く時間を週に11時間ほど設けます。旅行や運動会をせずとも、おそらくこれだけで定着率を上げる効果はあるでしょう(相当単純化していますが)。

 

 ということで、他社の成功事例には貴重な情報が詰まっています。ヒントの宝庫なのです。それを掘り起こし、自社に活かすのは社長であるあなたしかいないのです。ぜひ、視野を広げ、情報を活かす方法を考え、実践していきましょう。