コラムNo.65 店舗の仕事に「資格」や「検定」は必要ない?

 今さらですが、私は現在、店舗ビジネス(アパレル小売)の経営と同時にコンサルティング会社を経営しています。人財育成において、双方の経験の中で痛感していることがあります。それは、「自ら勉強しない人間は絶対に成長しない」ということです。当たり前と思われるかもしれませんが、ここをわかっているかどうかで会社の将来は左右されます。それぐらい重要なことです。

 

 圧倒的多数の店舗スタッフは自ら勉強しようとはしません。これは経営者の皆さんであれば、わかっていただけるのではないでしょうか。例えば、同じような実力のスタッフに店長を任せても、皆同じように成果を残し、成長するとは限りません。この差は会社側の教育制度の不備というよりも、自発的な勉強ができているかどうかで決まります。

 

 もちろん、マネジメントの素質うんぬんも関係しますが、そもそも素質のある人間はごく少数です。そして素質があったとしても、何もしなければ、自発的勉強をしていた場合と比べ、成長の度合いはまったく異なってきます。これは新人として入社した後も同様です。素質があったとしても最初から上手くできる人間はほとんど存在しないのです。

 

 「役職が人を育てる」という言葉があります。一面の真実ではありますが、ことはそう単純ではありません。明らかにレベルが追い付いていないスタッフを店長に任命しても潰れるだけであり、仮に実力が相応にあると思われるスタッフだったとしても、前述のように自発的勉強の有無でその違いが鮮明に表れます。単に役職を与えただけで人が育つのであれば、これほど楽なことはありません。

 

 ですから、経営者の仕事としてはスタッフが自発的な勉強を促すような仕組みを構築することが最重要事項となります。仕組みといっても難しく考える必要はなく、店舗にとって役立つ知識やスキルを身に付けることができる「機会」を提供すること、そしてできれば会社から金銭面での「助成」を行うことです。

 

 最初は会社側からの強制的な研修で対応することも必要となるでしょう。前述のように自ら勉強するスタッフは少数派ですから。しかし、それを地道に続けていくことで必ず成長志向のスタッフが出てきます。それが一人、二人と伝播していき、組織全体に伝染するまで粘り強く働きかけていくのです。

 

 それでは具体的にどういう機会を与えればいいのでしょうか。業種によっても違いますので一概にはいえませんが、例えば各業種に合った資格や検定試験などを受験させることも一つの手です。合格した際は待遇に反映させることも忘れてはなりません。世の中には様々な資格や検定があります。店舗ビジネスに関係するものでいえば、サービス接遇検定やレストランサービス技能検定、販売士など…ソムリエなどもありますね。

 

 しかし、こういうことを言うと必ず「現場で資格や検定など全く使えない!」「頭でっかちになるだけで時間の無駄!」「机上の空論!」という声が上がります。大半はその内容も知らずに感情だけでいっている人なんですが…。

 

 確かに現場の仕事と座学で学んだことにギャップはつきものです。しかし、その仕事を全体で俯瞰し、その理論や時間的な流れが把握できることは、現場だけで学ぶよりその理解のスピードや深さにおいて圧倒的な成果をもたらします。資格や検定ありきではダメですが、仕事を補完するための勉強は仕事のレベルを上げてくれるのです。

 

 スポーツでいえば、サッカーでも野球でも陸上競技でも何でもそうですが、常にダラダラと試合だけやっていても実力もつかなければ、継続的に好成績を上げていくことはできません。勝利をつかむためには、試合とは別に相応の練習が必要であり、理論を体系的に理解することが必要となるのです。それはチームでの公式な練習をはじめ個人での自主的な練習を徹底して行うことがその礎となります。

 

 店舗ビジネスでいえば、公式練習が会社から与えるOJTやOFFJTであり、自主練習が自ら進んで行う資格や検定の勉強、業界の研究、または本を読むことも含まれます。この自主練習、つまり自発的な勉強をどれだけスタッフ個人ができているかで、会社の業績は決まるといっても過言ではありません。

 

 会社から与えられた教育だけでは、プロ人財は育ちません。今いるスタッフが自発的な勉強をする環境を整えられるのは、経営者しかいないのです。何回もお伝えしていますが、何もせず放っておいて、スタッフが自発的な勉強をすることはほぼありません。期待しすぎてはダメなのです。

 

さて店舗経営者の皆さん、スタッフの自発的な勉強を促す仕組みを作っていますか?

 

そして、ご自身はしっかりと勉強をしていますか?