コラムNo.96 売上をつくるよりも価値のある仕事

 

 今さら言うまでもないことですが、店舗ビジネスではどこもかしこも人手不足です。自社が求める人材がはっきりしており、それを言語化して求人をかけたとしても、人材の絶対数が少なければ思うように集まらないのはどんな繁盛店でも同じです。

 

 そこで大半の店は苦肉の策として、経営者や従業員、もしくは取引先の親族、友人、知り合い等にお願いして繁忙期を乗り切るという緊急避難策を講じることとなります。これは店舗経営者であれば誰でも経験があるのではないでしょうか。

 

 この方法は一時的に危機を乗り越えることができますが、結局は対症療法なので毎年同じ時期に同じようなドタバタ劇を繰り返すこととなります。最近は特に人手が足りないため、このドタバタ劇が日本全国毎日のように繰り広げられているのは皆さんも想像に難くないでしょう。

 

 「じゃあどうすればいいんだ!」という声が聞こえてきそうですが、人のつながりを使った人材確保(いわゆるコネ)が悪いということではありません。むしろ今の時代、どんどん活用すべき方法だと私は思います。そうではなく、計画性もなく、行き当たりばったりで毎年同じことをやる無駄を無くしてほしいのです。

 

 「活用」するというのは、その時期になって行き当たりばったりで人に頼むのではなく、仕組みとして計画的に運用していくということです。言い換えれば、これまで毎年演じていたドタバタ劇に脚本や演出をつけて本物の演劇にするということです。

 

 具体的には、社内に「人材の紹介」の仕組みを作って明文化することです。これによりドタバタ劇の労力は相当減少します。求人媒体に広告料を支払うよりも費用対効果は高く、さらに全くの他人をあてにするよりも当たりはずれが少なくなります(リスクゼロではありませんが)。

 

 人材の紹介料もしっかりとルールを決めて支払うことで、透明性のある運用が可能になります。ドタバタ劇だと、その都度で支払う金額もタイミングも違うため、関係者は紹介することに躊躇してしまうでしょう。

 

 もちろんお金だけがすべてではなく、紹介してくれる人もお金だけが目的ではないでしょう。ただ、私に言わせれば新たな人材を紹介することは、売上を作ることと同等あるいはそれ以上の意義があります。ビジネスでは「人」がすべてだからです。その仕事は会社を作ることに他ならないのです。「人材の紹介」という重要な仕事に対して金銭的な報酬を支払うことは当然のことであり、ただで「誰かいい人いない?」などと軽々しく頼むほうがどうかしているのです。

 

 「人材の紹介」を仕組み化するにあたっては、まずは自店が法令順守していることが必要条件となります(当たり前ですが)。さらに最低限の作業マニュアル(シート1枚でも2枚でも、手書きでも何でも構いません。仕事の再現性のあるマニュアルです)と育成マニュアル(習熟段階に応じたチェックシートや具体的な目指すレベルを明文化したもの)は準備しておいたほうが良いでしょう。

 

 仕組み化とは、誰がやっても同じような結果を生み出すことができるようにすることです。店舗の作業や育成の基準となるマニュアルがあってはじめて、紹介料の金額や支払う条件を決めることの意味が生まれます。でなければどんなにいい人が数多く紹介されたとしても、ザルで水を掬うごとく、すべての人材が漏れていき、店を去っていきます。

 

 逆に言えば、店舗に作業や育成のマニュアルがないからこそ、常なる人手不足を呼び込んでいる可能性は高いのです。ですから、今まで安易に紹介に頼っていた店舗の方々は一度自店の運営の仕組みを見直してみましょう。人手不足の意外な要因が隠れているかもしれません。