ニュースの論点No.143 店舗の拡大スピード

 「中華的珈琲 ラッキンコーヒー スタバ匹敵」2020117日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば「中国の新興カフェチェーン、ラッキンコーヒーの出店攻勢が止まらない。中国で圧倒的な地位を築いてきた米スターバックスを追い抜いたとみられ、2019年は店舗数を2400店超増やした。」としています。

 

 ラッキンコーヒーは2017年末に創業した中国のカフェチェーンです。アプリでの注文のみで、テイクアウトやデリバリーを主とした営業を行っています。20181月に1店舗目をオープン後、1年で2000店舗まで増やし、2019年は2400超増、現在では4500店舗以上を展開しています。2年で4500店舗!中国では業界トップのスターバックスが約20年で4000店舗となったことを考えれば凄まじいスピード感です。

 

 ラッキンコーヒーの価格帯はスタバの12割ほど安価に設定されています。さらに定期的に無料クーポンを配布したり、3杯購入ごとに次の1杯が無料になるようないわゆる「ばらまきマーケティング」で人気を集め、シェアを獲得していきました。また、ここまでの大量出店が可能な理由の一つとして、低い出店コストが挙げられます。

 

 ラッキンコーヒーには3種類の店舗があり、通常のカフェのようなリラックス店、テイクアウト専門のピックアップ店、デリバリー専門のデリバリーキッチン店となっています。その中で一番店舗数が多いのはピックアップ店で、全体の90%以上を占めていると言われています。要するにラッキンコーヒーはテイクアウト専門のカフェチェーンだと言え、店舗とはいっても単なる「受け渡し場所」のため、設備投資も一般的なカフェに比べ安価に済むというわけです。

 

 とはいえ、ラッキンコーヒーは創業以来黒字になったことがありません。いくらコストを抑えても、ここまで爆発的なスピードで拡大をすれば出ていくお金の方が多くなるでしょう。2019年の第2四半期では約100億円の赤字を計上しており、前年同期の2倍に拡大しています。しかし、同社のCEOは強気の姿勢で、「今後数年間は戦略的赤字を出し続ける」と宣言し、拡大路線をやめるつもりはないようです。

 

 さて、ラッキンコーヒーの今後はどうなっていくでしょうか。シェア獲得のために惜しむことなく投資(ばらまき?)をおこなったことで利用者は爆発的に増えました。しかしここからが問題で、利用者にとって「ここのコーヒーを飲む」ことが習慣化するようにしなければ先はありません。「ここじゃないとだめだ」という気持ちを植え付けることとも言えます。

 

 しかしながら「コーヒー」というどこにでもある超コモディティ商品を独占的に提供するのはかなり難しいと私は思います。さらに過去の歴史を見ても「流行りモノ」は必ず模倣され、市場が一気に飽和し、すぐに飽きられます。

 

 一気に広がった分、同じ力で一気に萎む、あるいは破裂するのは自然の摂理です。ラッキンコーヒーのビジネスモデル自体は特に目新しいものではなく、真似もしやすい形態です。そのリスクは経営者が一番わかっていると思いますが、このタイミングではもう立ち止まれません。せっかくここまで拡大したのですから、歴史を覆すべく一気に突き抜けてほしいと思います。