ニュースの論点No.26 石の上にも三年は古い?

朝日新聞は20171014日、

「すし3か月、パン5日…

職人修行マニュアル化で一流の味」

と題した記事を掲載しました。

 

記事によれば、タイトル通り、

すしであれば3か月、パンは5日の

育成校での実習により現場で通用する

実力をつけられるということです。

 

感覚に頼らず、マニュアル化の徹底で

一流と遜色ない味が出せるとのこと。

 

すしの実習は株式会社RETOWN HUMAN

運営する飲食人大学(東京、大阪、名古屋)

で行われています。

 

同社が運営する店舗「鮨 千陽」

(すし ちはる 大阪府大阪市福島区)

は飲食人大学の卒業生と生徒で切り盛り

する店で、何とオープンからわずか11か月で

ミシュランガイド京都・大阪2016に掲載。

 

従来、飯炊き3年、握り8年と言われていた

すし職人の世界を大きく変える出来事と言えます。

 

飲食人大学は3年前に開校し、そのカリキュラムは

徹底した反復をさせることが特徴となっています。

 

受講費用は3か月コースで60万円と

安くはないですが、これまでに約500人が

実習を受けています。

 

また、飲食人大学では寿司以外に焼鳥、鶏料理や

パティシエ、そば、うどんなどのコースが

あります。

 

すしでの成功が他の分野にも波及し、

これからますます生徒が増えていくことが

予想されます。

 

3か月という短期間で顧客が望む成果を

残すビジネスモデルという意味では

今、勢いのある“ライザップ”が挙げられます。

 

ライザップは当初ボディメイク、

すなわちムダな脂肪を落とし、筋肉質の

身体を3か月程度でつくりあげるプログラムを

提供していました。

 

現在はそのノウハウを横展開し、ゴルフ、

英会話、料理教室と意欲的に業務を拡大しています。

 

ライザップに関しては1対多の学校形式ではなく

マンツーマンでおこなうため基本的なノウハウは

異なりますが、数か月という短期間で比較的高額な

サービス提供をしている業態として飲食人大学と

共通する特徴があります。

 

ライザップが提供しているサービスも

すし職人の修行と同様に、ダイエット、

ゴルフ、英会話、料理教室など

通常は3か月程度の努力でなかなか成果が

あらわれないものと認識されています。

 

しかしながら、どちらも3か月程度で成果を

残しており、両社が残した実績はこれまでの

私たちの経験や先入観がいかにその成長のブレーキを

踏んでいるかということを証明したともいえます。

 

私も含めて、短期間で同じ成果が見込めるのならば、

ほとんどの人は確実にその方法を選ぶでしょう。

 

利用者としては喜ばしい半面、本当にその

実力がつくのか。また調理技術以外のサービス面は

どうなるのか。という疑問が当然わきます。

 

さらには仕事の本質をつかめず表面的な

理解にとどまり、成功することを簡単に考えてしまい

店舗が軌道に乗るまでの厳しい期間に耐えられず、

すぐにやめてしまう人が増加するのではないか

などの懸念があります。

 

近年、インターネットの浸透とテクノロジーの進化に

よる世の中の変化がすさまじいスピードで

起こっています。

 

その影響もあり、企業が提供するモノやサービスの

陳腐化が以前よりもどんどん早まってきています。

 

情報格差も縮まってきており、その時差もなくなりつつ

あります。

 

数年前と比較すると、欲しいものやサービス、

情報が圧倒的に早いスピードで手に入るように

なりました。

 

これらのことから、最近特に、何についても

短期志向が強まっていることを感じます。

 

確かに、同じ成果が短期間で手に入るのなら、

わざわざ何年もの間修行することはないと思います。

 

修行している間に世の中の動きが変わることも

ありますので、その時機を逸さない意味でも

下手に長いよりは短いほうが望ましいでしょう。

 

しかし最近の動きを見ていると、何でもかんでも

短期間での成果にとらわれすぎているような印象があります。

 

1万時間の法則というものがあります。

 

ざっくりと言えば、プロレベルの技術を

自分のものにするのには最低でも1万時間がかかる

というものです。

 

1万時間というのは休まずに毎日9時間続けて

3年かかります。

 

当然なんにでも適用できるわけもなく、賛否のある

法則ですが、自身の経験や関わった事例などから

判断すれば、この法則は腑に落ちます。

 

つまり3年やってようやく一人前ということですね。

 

新店もオープンして軌道に乗るまではやはり

3年かかることも多い。

 

だから3か月で一流の技術が身につくのは

おかしい、とはいいません。

 

私が言いたいのは、継続することの大切さです。

単にだらだらと惰性でやるのではなく、

目的に向かって厳しいときも歯を食いしばって

その仕事を続けていくことです。

 

なんでも短期間でお手軽に(もちろん期間中はきついでしょうが)

手に入ることに慣れてしまうと、細切れの経験を

パッチワークのようにツギハギにして、薄っぺらい

似非プロになる可能性が非常に高い。

 

モノの道理として、短期間で得た成果は短期間で失われます。

 

とはいえ、長く続けることが本物のプロになる唯一の道では

ないでしょう。

 

しかしながら、根本に短期志向があるとどうしても

長期的な視野での目的が見失われがちになるのでは

ないでしょうか。

 

もっとも、一つの仕事にこだわって、一生涯その仕事を

やり続けるのは、今の時代相当なリスクです。

 

そう考えれば、短期間で今までの仕事とは

違うスキルを得る機会があるのは非常に良いことだと

思います。

 

ただ、3か月で技術は身についても、それ以外に

必要なことはそう簡単には自分のものになりません。

 

技術だけでは当然成功しないため、そこを理解した

うえで、長期的な視野で実績を積み重ねていくことが

王道だと私は考えます。

 

“時間”が価値を生み出すことも多いのです。