ニュースの論点No.10 その投資は誰のため?

 

201773日の日経新聞によれば、

日本政策投資銀行とワールドは、ファッション業界

を対象にしたファンドを立ち上げるということです。

 

記事の中で、「ファッション業界は個人消費や

百貨店の販売不振、格安ブランドの広がりで

商品力があっても業績が振るわない企業も多い。」

 

「資本と豊富な人材を持つ両社が協力して

投資先の収益力を高め、成長を後押しする。」

 

「出資を通じて経営権を取得し、商品開発や生産管理、

市場調査などを支援し、企業価値を高めていく。」

 

とのことで、最終的には第3者への株式譲渡や

新規株式公開による売却で投資資金を回収するようです。

 

この取り組み自体は、日本全国に

埋もれている、潜在能力のある企業にとって

非常に助かるものでしょう。

 

ファッション業界にとっても、このファンドが

手助けをすることで、現在の厳しい状況から

少しは改善するかもしれません。

 

しかしながら、私の意見としては少々違います。

 

まず、商品力があっても業績が振るわない企業

はどこにあるのでしょうか。

 

業界を問わず、どこの企業も最初は知名度も低く、

厳しい戦いを強いられます。

最初から上手くいく企業などありませんし、

すぐにうまくいったとしても絶対に長続きはしません。

 

その意味では、創業時は商品力があるということはなく、

社歴を重ねるごとに知名度があがり、商品が知られ、

改善を積み重ねていくことで商品力も上がっていきます。

 

つまり、ある程度年数を経ている企業で商品力があるのであれば、

経営は上手くいっていないとおかしいのです。

上手くいっていないのであれば、それは商品力がないのと同義です。

 

ということは商品力があって業績が振るわない企業は

どこにも存在しないことになります。

 

投資をするのであれば、新しいものを生みだすベンチャー型

のファッション企業が本質だと私は考えます。

 

記事中で、このファンドは「業績が上向かない

企業の成長支援や、後継者難を抱える企業の

事業承継、MBO(経営陣が参加する買収)

などの案件を想定」しています。

 

この文脈から推測すると、創業したての

ファッションベンチャー企業に投資すること

はどうやらなさそうです。

 

もちろん、全国に存在する有望な企業に

対しての支援は意義のあるものです。

 

しかし、前述のように商品力があっても

振るわない企業などという

ものははっきり言って存在しません。

 

冒頭の、「ファッション業界は個人消費や

百貨店の販売不振、格安ブランドの広がりで

商品力があっても業績が振るわない企業も多い。」

という記事は、まさにワールドそのもののこと

ではないでしょうか。

厳しい言い方になりますが、自己弁護をしているように

感じます。

 

ここでワールドの業績を見てみますと、

20133月期~20173月期の5期で、

売上額は3294億から2575億と2割以上

減少しています。

 

一方営業利益は113億から144億と2割以上

伸ばしています。

 

売上は5年間通じて減少基調になっており、

営業利益は2015年を底に1617年と伸びてきています。

 

ワールドは2015年あたりから不採算店舗の縮小を

大々的に行っています。

 

90あるブランドを10~15廃止し、

閉鎖店舗数は約2800店舗中の400~500店舗、

社員の4分の1の早期退職を募り、

大幅なコストカットを行うことで、

財務状況の改善を図り、売り上げ減少の中

営業利益の回復を実現しています。

 

鮮やかな立て直しとも見れますが、

要は儲からない店舗を潰して、人件費を削った

だけです。

 

もちろん、立て直すにはまず手を付けなければ

ならないところですので、その意味では

素晴らしい仕事です。

 

しかし、大事なのはここからです。

肝心の売上は減少を続けているため、

どこかで新たな戦略をつくりあげ、

ブランドや店舗の開発をしていかないと

コストカットでの利益確保は長く

続きません。

 

早期退職を募るのもいいのですが、

優秀な社員から辞める可能性も高くなります。

人件費の削減効果はそこ数年続いても、

人材がいなければ成長は望むべくもありません。

 

まあ、本社の方々は当然わかってらっしゃいますので、

釈迦に説法だと思いますが、こういった状況で

ファンドを立ち上げている場合なのかな…と強く思います。

 

支援を図る企業のブランドや技術など、

取り込んでいくことも考えられますが、

今、伸びている、あるいはブランドとして本当に

魅力のあるファッション企業は当然手を組まない

でしょう。

 

そうなると前述のようにすでに死に体に

なっている企業の延命や、意味のない吸収合併を

することになり、企業価値を上げるなど

どだい無理な話ではないでしょうか。

 

そもそも最近まで自社が厳しい状態で、

リストラを行い財務基盤がようやく

安定してきています。

 

色々な思惑はあるにしろ、本当に

ファッション企業を成長させる

ノウハウがあるのかどうかも不明です。

 

あるのであれば、自社をまずしっかりと

伸ばしていくことが優先されてしかるべきです。

 

店舗ビジネス経営者のみなさんも、

まずは自社の経営をしっかりと行うように

してください。

 

特に余裕が出てきた時が一番の落とし穴です。

成長するための投資は必要ですが、

目的をもって行動するようにしないと

本業を潰してしまうこともあります。

 

ぜひ心にとどめておいてください。