ニュースの論点No.109 本当に継がせたいと思っていますか?

 

 「家業の救世主 アトツギ ベンチャー型事業承継広がる」2019527日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「後継者がいない中小・零細企業の廃業問題が深刻になる中、若手後継者を支援して事業を高度化し家業を継続させる「ベンチャー型事業承継」が各地に広がり始めた。」

 

 「家業を引き継ぎつつ新事業に乗り出す「アトツギ」経営者は自社の信用や経験を生かせるうえ、本業に影響ない範囲で試行錯誤もできる。東京に一般社団法人が発足して支援活動を開始したほか、地方自治体や地方銀行も関心を示している」としています。

 

 このニュースは要するに後継者が既存事業をそのまま引き継ぎ、運営するのではなく、今の時代に合わせた新事業を展開し、さらなる発展を目指す後押しをする動きが官民に広がってきたということですね。

 

 ちなみに帝国データバンクが18年に行った全国27万社の調査では、後継者不在率の全国平均が66.4%となっています。また別のデータで、中小企業庁の試算では2025年に127万社が廃業の危機を迎えるともあります。

 

 数字もそうですが、経営者の高齢化は私の実感としても強く、70前後の社長がまだまだ頑張らざるを得ないという状況をよく見聞きします。今はまだいいですが、いずれ立ち行かなくなるのは火を見るよりも明らかです。冒頭の記事のような動きは非常に良いことだと思います。

 

 事業承継が難しい点は、後継者がいないこともありますが、一方で経営者が口では事業承継を望んでいると言いながら、内実まだ自分が社長として影響力を持っておきたい、自分が中心となって会社を経営していきたい、地位を渡したくないといった感情がネックとなることも少なくありません。

 

 特に自身で創業した会社を継がせるということは、経営者にとって最後の大きな決断となります。自分が納得するような後継者が現れればまだよいのですが、ほとんどの場合、期待通りとはいきません。後継者候補のダメな部分ばかりが目立ち、やはり私がいないと…となってしまい、ズルズルと時間ばかりが浪費され、そのうち後継者もやる気がなくなって…と笑えない事態になります。

 

 いずれにしても、事業承継は人材難と同等かそれ以上に現経営者の覚悟が必要となってきます。しっかりと任せることができなければ、いつまでたっても承継できず、結局自分で自分の首を絞めている状態から抜け出せなくなるのです。

 

 そのことに気が付いていない経営者も存在します。自分は後継者を望んでいるが相応しい人がいない…と本人は思っていますが、実際は身近にいても能力を過小評価しているか、そもそも無意識の中で「承継したくない」と思っていることからこういう意見になってしまうのです。

 

 年齢を重ねると様々なリスクが高くなってきます。元気な今だからこそ、事業承継のチャンスです。思い当たる経営者の方はぜひ行動してください。任せなければ人は絶対育たないのです。