ニュースの論点No.119 ○○向け商品の行く末

 「訪日したらどこにいく?百貨店で爆買い退潮(中国人消費SNS分析)」201982日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「日本への旅行時に「行った」とつぶやいた場所や施設について、ランキングを見ると、2015年当初はLAOXやマツモトキヨシ、ヨドバシカメラ、ドン・キホーテなどの量販店・ドラッグストアが上位にきている」

 

 「翌1617年には銀座三越や松屋銀座、GINZASIX、伊勢丹新宿本店などの百貨店もTOP30以上に名前が現れ」「1810月になると、このランキングに現れる小売店はドン・キホーテとジェイアール京都伊勢丹の2店舗のみ」しています。

 

 3年で随分と順位が変動し、小売店が減っています。ただし、訪日中国人の「買い物をしたい」というニーズはいまだに1位で、彼らが買い物をしなくなっているわけではなさそうです。

 

 百貨店がランキング上位から姿を消した要因としては、百貨店での買い物にステータスが感じられなくなったことも大きいといえます。当初は日本の百貨店の品揃えや品質が支持され、購入者がSNSで次々にアップしたことで注目されましたが、今は慣れもあり、ごく当たり前ともいえる状況で、わざわざ足を運ぶ価値は相当減少していると考えられます。

 

 他の要因として、免税で買い物できる店舗の増加や決済方法の充実もあり、百貨店など特定の小売店で買い物をする必要性が薄くなってきていることも大きいでしょう。まあ、爆買いのような一時的な現象は、いずれ飽和点に達し必ず収束しますが。

 

 一方、別の視点から私の中で強く印象に残ったのは「大型店や有名店は中国人観光客がやってくる季節になると、中国人向け商品を売り出そうとする。でも私が欲しいのは、日本人が普通に安心して買っている物なの」という記事中にある上海出身の女性の言葉です。

 

 これはあらゆる商売で当てはまります。代表的な例として、「シニア向け商品」はシニアに見向きもされません。独身男性向けやLGBT向け等も同様です。結局「大きなお世話」としか言えない売り方は無視されるか反発されて無駄骨に終わるのです。

 

 「この人たちはこういうモノが欲しいんだろう」という偏見と先入観がたっぷり入った思い込みで商品を開発、仕入をおこなうと、高い確率で失敗します。上海出身の女性が語ったことがすべての人の思いを代弁しているのではないでしょうか。

 

 「日本人は皆ちょんまげで刀を差し、忍者が走り回っている」というような外国人が抱く日本のイメージはもうあり得ないかもしれません。しかし、実際に行ったことのない国で体験したことのない文化は、誰かのフィルターが掛かった情報でしか知りえません。例えばアフリカ諸国の生活環境のイメージが、古い映画などから更新されていない人もいるのではないでしょうか。ここに大きな落とし穴が存在するのです。

 

 日本で身近にいる人たちの趣味嗜好すらよく理解できていない中、外国人のことを理解するのは困難を極めます。「相手が何を求めているのか」を普段から徹底して理解する努力を続けることだけがその唯一の近道であり、国境を越えて支持される店舗ビジネス経営者としての大事な素養と言えます。