ニュースの論点No.121 今後生き残る店舗の条件

 「デジタル疲れ、実店舗復活か」2019816日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「スマートフォンの普及でリアル店舗はネット通販の攻勢にさらされてきた。しかし、品ぞろえや商品提案力といった実店舗ならではの強みを磨いて売上高を伸ばす企業も目立つ」としています。

 

 記事ではウォルマートがネット注文した生鮮食品を実店舗で受け取れるサービスや、1500円の入場料でコーヒーを飲みながら購入前の本をじっくりと試し読みできる「文喫」、またTSUTAYAの書籍販売額が過去最高の1330億円となったことなどを実店舗復活の兆しの例として取り上げています。

 

 さて、BtoC(企業→消費者)のEC市場規模は留まることを知らない成長を続け、2018年で約18兆円と2010年の77千億から10兆円伸ばしています。日本のGDPは近年横ばいであることから、ネットでの商取引がリアルを侵食しているのは間違いありません。

 

 実店舗の業況を全体的に見れば、EC市場規模の推移からもわかる通り、復活しているとはとても言い難い状況です。ネット通販だけの影響ではありませんが、基本的に店舗数は減少し、残った店舗の売上も減少しつつあります。ただし、小売業全体として店舗面積は増大しており、ますます運営効率(収益率)は悪化の一途をたどっているのですが。小型店舗は駆逐され、大型店舗が増えつつあるのは皆さんの印象としてもあるのではないでしょうか。

 

 本記事はそういった状況の中での、上手くいっているほんの一部の現象を取り上げていると言ってもいいでしょう。確かにデジタル疲れはあると思われますが、それくらいでネット通販の拡大に急ブレーキがかかることはないでしょう。かといって実店舗がすべてなくなると考えるのもナンセンスです。

 

 もっとも、ネット通販で代替できる店舗がなくなっていくのは、これからどんどん加速していくでしょう。アメリカでは近年、数千店舗が閉店しており、郊外の大型店舗が廃墟になっていく例が多数報道されています。日本でも、「安価」で「どこで買っても同じもの」を扱う店舗は、大多数が淘汰されていくでしょう。

 

 ただし、よく言われていますが、これは決してリアル対ネットの争いではなく、どう共存共栄していくかの問題です。トレードオフの関係ではありません。店舗に限らず、ビジネスはお客様にとっての価値を向上していくことが大義です。

 

 得意分野を見極め、そこに集中することははるか昔から言われ続ける成功への王道です。今後、リアル店舗で求められるのは、すでに言い古されていますが、モノからコトとなっていきます。つまり「そこでしかできない体験」を提供するしかないのです。

 

 ただ商品を仕入れて売るような商売は、これからのリアル店舗では決して成り立ちません。人が介し、新たな価値をつけることができなければ、ネットの方が1万倍マシです。デジタル疲れと言っても、これからもっとデジタル化、ネット化の波は大きくなり、価値を生み出さない右から左の商売はあっという間に駆逐されていくでしょう。

 

 繰り返しますが、「リアル店舗の価値」は「そこでしかできない体験」です。これしかありません。今後生き残れる実店舗になるには、ここを磨いていくことだけが唯一の道なのです。