ニュースの論点No.123 楽をした結果

 「マルイは売らない 体験を売る」201992日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「商品やサービスの売り買いは全てネットに集約されていく。そんな未来を見据えて、丸井グループが店舗改革を急いでいる。合言葉は売らなくてもOK」としています。

 

 丸井は2015年より従来の百貨店型からSC型へと業態転換を進めてきました。百貨店は“一応”小売店で、仕入れて売るタイプのビジネスモデルです。一応と付けたのは、その大半が売れた分だけ仕入として計上する「消化仕入」と呼ばれる取引形態を採用しているからです。

 

 この「消化仕入」は、仕入とは名ばかりで、百貨店の社員が仕入をしているわけではありません。取引先メーカーの判断で納品された商品で、販売をするのは主にメーカーの社員か、あるいはメーカーと契約した販売専門会社の販売員です。ですので百貨店の大半の社員は、フロアの各店にどんな商品が置いてあるかをほとんど知らないと思って間違いありません。

 

 消化仕入は百貨店にとって在庫リスクはゼロであり、商品を自分たちで選ぶ必要もなく、さらに販売までやってくれるわけですから、彼らにとって願ったり叶ったりの仕組みだと言えるでしょう。しかしその副作用は半端なものではありません。

 

 自分たちが楽をした「ツケ」は確実に回ってきます。リスクを取ってお金を出さず、自身の目で見ず、頭で考えず、売り場の管理だけをして仕事をした気分になっている間に、目利き力や販売力は著しく低下していきます。ついでに顧客の顔も見えなくなり、その関係性も薄くなっていきます。これはつまり百貨店としての存在意義がなくなりつつあるのです。

 

 結局百貨店が今までやってきたことは、「場所貸し」でしかありません。契約形態が違うだけで、「消化仕入」という名のもと、その内実は小売業の顔をした「暇な大家さん」です。恵まれた立地と、百貨店ブランドに胡坐をかいて、長期に渡り形成されたさまざまな経営資源を食いつぶしている状態なのです。

 

 この点、マルイは「場所貸し」に徹し、「百貨店型の消化仕入」から「SC型の定期借家契約」への変更により、売上が上がらずとも安定した収益を出せる業態に変革しています。さらにそこから一歩進んで、百貨店の好立地を生かした、顧客接点としての価値をつくることと、その場での売上にこだわらない柔軟な対応がネットでの販売を重視したテナントからも支持されている一つの要因でしょう。

 

 マルイの変革は百貨店にとっての一つのロールモデルとなるでしょう。ただし、マルイの事業構造においては、カード事業をはじめとした「金融」が中心です(営業利益ベースでは約8割を占める)。このこともモノではなくコトへの変革に一役買っているのは間違いありません。他の百貨店が安易にマネをしてもそう簡単に事は運ばないでしょう。

 

 いずれにしても、百貨店に限らず、既存の小売業態は変革を求められています。要するに時代に合わなくなってきたことが、誰の目に見えるようになってきたのです。ここで変われなければ、規模の大小を問わず、確実に淘汰されていきます。どの道を選ぶのかは経営者次第です。