ニュースの論点No.125 高いモノと安いモノを一緒に売ると…

 「地方百貨店にアウトレット 有力80ブランドが集結」2019913日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「地方経済が疲弊し、閉店ラッシュが続く百貨店業界。そんななか、青森県が地盤の中三が、国内でも珍しいアウトレットモールを併設する新たな店作りに乗り出した。」としています。

 

 中三は東北全域から人を呼び込み、外国人観光客も取り込むための戦略としてアウトレットの併設を行ったということです。初日である830日は、開店前から100人を超えるお客様が列を作り、フロアは賑わいを見せたとのこと。確かに百貨店とアウトレットという組み合わせは斬新で珍しく、他にはない業態ミックスだと言えます。

 

 百貨店は基本的に中高価格帯の商品で正価販売というのがセオリーですが、近年はセールの長期化で百貨店といえども「安く売る」ことが常態化しつつあります。このことからも「アウトレット」という百貨店と真逆に位置するような業態を受け入れることに対する抵抗感は少なくなっていたとみていいでしょう。

 

 近年、百貨店業界は、マルイのテナント型事業への変革をはじめ、時代に合わせた業態の変化がはっきりと見て取れます。百貨店は小売業とはいえ、自らはほとんどリスクを取らない消化仕入方式で営業を続けてきたことから、目利き能力は衰え、すでに小売業としての機能はないと言っても過言ではないでしょう。

 

 マルイのテナント型への変革も、契約形態が変わっただけで、本質は以前から変わらない単なる場所貸しです。より自分たちがリスクを背負わなくなって済む形にしただけです。今回の中三の件も、はっきりいって苦し紛れの一手に過ぎないと思われます。業態のジレンマで自己矛盾を抱えているため、全体としては伸びていかず、いずれ飽きられ、売れなくなるでしょう。

 

 だとすれば、百貨店はこれからどうすればいいのでしょうか。私に言わせれば、本来の小売業としての力を取り戻すために目利き能力を育て直し、リスクを負って品揃えを強化するか、あるいはマルイのように場所貸しに徹するかのどちらかしかないと思います。

 

 現状維持志向では数年後に一気に傾く恐れがあります。何の努力もせず、お山の大将で殿様商売をしてきたツケが回ってきているのです。いずれにしても、自分たちでリスクを取るまっとうな経営をしない限り、百貨店という業態に明るい未来はありません。

 

 人もお金も余裕があるうちに動くべきだと強く思います。「まだ大丈夫」と思っているとあっという間に潰れる自体になりかねないのです。現在の百貨店ほど「創造的破壊」が必要な業態はないと思います。