ニュースの論点No.142 定年後はどうしますか?

 「60代の過半数 70歳超えても働く」2020111日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「日本経済新聞社が2019年秋に実施した郵送世論調査によると、70歳以上まで働くつもりだと答えた人が60歳代の54%にのぼった。」とのことです。

 

 さて、少し前の話になりますが、20196月、金融庁の金融審議会である市場ワーキング・グループが発表した報告書をもとに、「老後2000万円問題」が世間を賑わせました。問題の発端となった報告書では、「老後資金は年金以外に2000万必要」としており、前提として「夫65歳、妻60歳でともに無職」「30年後までともに健在」「その間、家計収支が毎月5.5万円の赤字」を条件としています。

 

 家計収支が毎月5.5万円の赤字の内訳は、社会保障給付(年金)をはじめとした収入が約20万、支出(主に生活費)が約26万となり、その差が5.5万円の赤字になるということです。ここから5.5×12ヶ月×30年で1980万≒2000万が必要になる計算ですね。

 

 一方、金融広報中央委員会が公表した2018年の調査によれば、60歳代の平均貯蓄額は1849万、70歳以上だと1780万となっており、この数字だけ見れば老後に必要な資金2000万を何とかカバーするくらいの貯金額はあるといえそうです。

 

 とはいえ、貯蓄は必要資金ギリギリの額でもあり、生活に余裕を持つことを考えると、記事にもあるように少しでも長く働こうとする心理は働きやすくなります。また、今後は「平均寿命の延び」「退職金の減少」「年金の減額」によりさらに老後資金が不足する可能性があります。それらを考えあわせれば、これまで一般的であった「60歳でリタイア」という選択肢は限られた人だけの特権となりそうです。

 

 法的には、「高年齢者雇用安定法(70歳定年法)」の改正案が通常国会に提出され、早ければ20214月から実施されます。企業には70歳までの就業機会を広げる努力義務が課せられ、働く側がどう思おうが70歳までは半ば強制的に働くことになりそうです。

 

 どうせ働くなら楽しく働きたいものです。「あまり働きたくない」「できれば楽して生活したい」というのは人間の本性であると思います。しかし、それを除いても日本は会社に対する社員のエンゲージメント「愛着、思い入れ」が世界でも最低レベルで、熱意溢れて仕事をしている社員は7%しかないとのことです(米ギャラップ社調査。アメリカは30%)。

 

 要はいやいや仕事をしている、させられている人が大半だということです。私に言わせれば、なぜそんな仕事はさっさと辞めてやりたい仕事をしたり、好きなことを仕事にする時間をつくらないのか全く分からず、「いやいや働く状況」は単なる人生の時間の無駄遣いでしかありません。

 

 人によってさまざまな事情はあるでしょう。しかし、いやいや働く期間を70歳まで伸ばすのは誰にとっても苦痛です。仕事は人生の大半の時間を使います。それを「いやいや」で「しょうがなく」、「生活のため」にやるのは、少なくとも私には理解できません。

 

 皆が皆、やりたい仕事や好きなことがあるわけではないと思います。何もない中で地道に仕事をこなしている人も多いでしょう。もちろんそれは否定しません。ただ、死んだ魚のような目で、ストレスをためながら、現状の不満や愚痴ばかりで何の努力もせず、他人任せで権利だけ主張するような人生よりは、仕事でもそれ以外でも、多少のリスクは顧みず何かに挑戦しつづける人生が私は良いと思っています。せっかく長く働くなら、本当に楽しく働きたいですね。