ニュースの論点No.144 今月の支払いが…

 「スマホ少額決済、気づけば借金 若者に多重債務リスク」2020124日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「多重債務者が再び増え始めている。融資額に規制ができた2010年度から減少して2年前には115万人程度になったが、足元は約120万人と増加基調に転じている。」としています。

 

 政府は3つ以上の貸金業者から無担保借入のある人を多重債務者としています。2009年には400万人近く存在していた多重債務者ですが、20106月に施行された改正貸金業法(融資額は年収の3分の1までとした総量規制や金利20%上限でグレーゾーン金利を撤廃)の効果もあり、2016年頃まで大きく減少してきました。

 

 しかしそこで下げ止まり、近年は少しずつですが増加傾向にあります。その背景として、本記事のタイトルにもあるスマホ少額決済の広がりがあります。日常、コンビニやECなどでの買い物の際にクレジットカードで直接、あるいはそれに紐づけられたさまざまな決済方法を使い、光熱費や電話代などあらゆる生活費、さらにはゲームによる課金などが加わることで「いくら使ったかわからない」状態となり、積もりに積もって数百万円になるパターンも少なくありません。

 

 ちなみに借入の総量規制対象は貸金業者からの借入のみであり、クレジットカードで商品を購入した場合や、ショッピングクレジットは対象外となります。クレジットカードも1枚だけ所持しているのであれば、上限額ぎりぎりまで使っても多くは10万~30万となり危険性はそう高くありません。しかし最近はネット申込みで比較的簡単、スピーディにカードが作れ、20代でも複数枚持つことは難しくないのです。そこに総量規制がかからなければ、特に慣れていない若年層はどんなに気を付けても「いつの間にか」額が増えていくことになります。

 

 特にここ12年でキャッシュレス決済が急激に広がり、政府も消費増税対策でそれを後押ししています。便利である反面、自身でしっかりと管理できなければ、知らないうちに多重債務者になり、最悪の場合自己破産の憂き目にあってしまいます。

 

 人はお札や硬貨などの現金を使う場合、脳の「痛み」を感じる部分が反応するそうです。つまり使った感覚が強く残ることで使い過ぎのリスクが減少します。しかし、クレジットカードをはじめとしたキャッシュレス決済ではその反応が弱く、痛みを感じにくいことから、「支払い能力以上」に使ってしまうリスクが大きくなります。

 

 売る側からすれば、痛みを感じることなくどんどん気前よく使ってもらったほうが良いのですが、それが長く続かなければ無意味どころかマイナスにしかなりません。もちろん商売ですから、お客様の欲求を刺激し、買ってもらわなければ利益は出せません。しかし、お客様を煽るだけだと必ずしっぺ返しが来るのです。

 

 店舗ビジネス経営者としては、キャッシュレス決済などお客様が買いやすい環境を作ることは当然としつつも、お客様と「無理なく長く続く関係性」をつくるため、誠意をもって商売をしていきたいものです。