ニュースの論点No.145 その兆しを感じ取る

 「ドンキ 宮崎の橘百貨店買収」202022日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。ドン・キホーテを運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、宮崎県でボンベルタ橘などを運営する橘ホールディングスを21日付で買収したと発表しました。今後、ボンベルタ橘はドン・キホーテを核店舗とした商業施設に業態転換され、再生を図ると見られています。

 

 これまでPPIHは長崎屋やユニーなどを買収し、ドン・キホーテで培ったノウハウをもとに再生を進めています。今回も同様のやり方で行くとすれば、業績は高い確率で伸びていくと思われます。

 

 さて、百貨店と言えば、本年1月に山形県の大沼が自己破産申請をしたことが話題となりました。大沼は創業300年以上の歴史を持つ老舗百貨店でしたが、近年は売上が低迷しており、経営をめぐる混乱も手伝ってやむなく自己破産の道を選びました。従業員も突然の発表、そして解雇に戸惑いを隠せず、今後への不安が相当大きくなっていることでしょう。

 

 これにより山形県は日本で唯一百貨店のない県となり、百貨店という業態の「終わりの始まり」がはっきりと目に見える形として表れたと言えます。ちなみに全国展開する伊勢丹や三越などはここ数年地方店の閉店を続けており、その意味ではすでに終わりは始まっていたといえますが、県として百貨店が無くなるということは、「業態として必要がない」と宣告されたようなものです。

 

 私は仕事柄百貨店の方々と接する機会が多いのですが、一番感じることは「危機感のなさ」です。今回の大沼の経営破綻については、従業員の皆さんは突然のことで非常に気の毒だと思う反面、その兆候は必ずあったはずで、見抜いたうえで自分から動けなかったのか…とも思います。

 

 業界に染まりすぎていると、自社を客観的に見ることができず、「何か最近景気が悪いな」くらいで止まってしまい、真剣に考えず、何も行動しないまま時間が過ぎていきます。気づいたときにはすでに遅く、自分の力ではどうすることもできない「使えない人」となり、当然転職も上手くいきません。そうなると会社に対する「怒り」だけが大きくなり、すべて他人のせい、会社のせいとしてしまい、周囲からは他力本願で残念な人の烙印が押されます。

 

 これは百貨店だけではなく、どの業界でもありえることです。特に過去の成功体験があるような業界であればなおさらです。自社は将来どうなるのか?そもそも業界は残っていくのか?と常に自分の頭で考えながら仕事をするべきです。その兆候は「現場」で一番感じることができるのです。