ニュースの論点No.152 官製セール

 「外食・旅行消費に助成 政府、売り上げ急減で重点支援」2020321日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「政府は4月にまとめる新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、売り上げが急減している飲食業や観光業などを重点的に支える。消費者が外食や旅行に支払う料金の一部を国が助成する制度を検討する」としています。

 

 この助成の予算規模は1兆円ほどということで、先日検討していることが発表された個人に対する12000円の定額給付金案も考えれば、結構な大盤振る舞いとなりそうです。観光や飲食以外にも、イベント関連も助成の対象とするそうで、飛行機や新幹線も助成対象になる可能性があります。助成率は未定で今後詰めていくとのこと。

 

 政府のコロナ対策として新たに出された案は本記事の個人向け以外に、コロナへの対応で赤字を出した企業に対し、前年度までに納付した法人税の一部を還付する方針を固めています。企業に対しては先日来お伝えしているセーフティーネット保証や特別融資、雇用調整助成金、社会保険の猶予などがすでに実行されており、現在の危機的状況に政府としてやれることはすべてやるという強い気持ちの表れでもあるのでしょう。

 

 これらの施策は収入が減少している多くの個人や企業にとって、非常に助かるものであることは間違いありません。一方で施策の乱発は後遺症も残します。現状、累積された日本の借金は1100兆円とも言われています。毎年100兆円の予算を組み、様々な政策をおこなっていますが、そのうちの約3割は国債などにより賄っています。つまり毎年赤字を出しながら国を経営しているという状況です。

 

 その状況の中で、今回のようなコロナ禍が起きてしまうと、さらなる赤字の増加要因となってしまいます。もちろん悠長に構えている場合ではありませんが、財源もない中で大盤振る舞いの施策をやったとしても、効果が無ければ財務状態の悪化を加速させるようなものです。

 

 さらに、本来は淘汰されるべき企業を延命させてしまう側面もあります。もっと若い企業に使うべき予算を、言い方は悪いですがムダ金としてドブに捨てるような使い方になってしまっては、国の死期を早めることにもなりかねず、まさに絵にかいたような本末転倒です。

 

 今回のような危機に政府が何もしないのはありえませんが、かといってなんでもかんでも面倒を見るというのもどうかと思います。私に言わせれば、現在出されているコロナ対策の中で、個人に対する定額給付金や外食、観光助成金はあまり意味があるとは思えません。その期間が終われば間違いなく惨憺たる状況が待っています。アブク銭での需要の先食いという薬物のような「一時の効果」しかないでしょう(その後の副作用はご想像の通りです)。

 

 コロナ禍でついた傷はそう簡単には治りません。だからこそ短期的なおカネの支援だけではなく、長期的な視野で社会の仕組み自体を変革する機会とし、成長のきっかけとしてとらえていきたいものです。