ニュースの論点No.165 価格改定の大義名分

 「サイゼリヤ 価格の端数ゼロに統一 感染予防へ小銭減らす」2020624日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「サイゼリヤは23日、全メニューの税込価格の端数を7月からゼロに統一すると発表した。新型コロナウイルスの感染予防対策の一環で、会計時にお客が受け取る釣銭を減らす狙い。」とのことです。

 

 会計時に1円や10円硬貨を受け渡す頻度を最大8割減らすと同時に、進んでいなかったキャッシュレス決済を積極的に導入することで「感染予防対策の強化」とアフターコロナの「ニューノーマルに合わせた店舗運営」の実現を目指していくとのこと。

 

 サイゼリヤはもともと低価格なイタリアンレストランとして人気があり、価格も299円や399円など切りの悪い数字、いわゆる「端数価格」で設定し、よりお得感を演出していました。ちなみに人は数字を左から右に読む習性があり、一番左の数字に最も強い印象を受ける傾向があるそうです。例えば299円と300円では1円しか違いませんが、消費者が受ける印象は大きく変わり、前者の方が購買意欲を刺激しやすいとのこと。スーパーなどでもよく見かける価格表記ですね。

 

 ただし、「端数価格」は嗜好品やぜいたく品にはあまり効果がなく、日常的に使用するものや、安さを求める商品に対して有効な価格戦略となります。この点、安さを売りにするサイゼリヤの端数価格表記は理にかなったものと言えるでしょう。

 

 さて、今回の感染予防対策の一環としての端数価格の変更ですが、どういう結果となるのでしょうか。サイゼリヤでは今回の価格改定で約140品のうち9割を121円値上げ(1割は1019円値下げ)するそうです。釣銭の受け渡しが減ったところでそもそも感染予防対策として有効なのかという疑問も湧きますが、それよりも1円とは言え値上げし、一番左の数字が一つ繰り上がるわけですから、お客様にとっては相当な「値上げ」と感じる可能性があります。

 

 たかが1円ですが、されど1円です。理屈ではわかっていても、無意識のうちに「全体的に高くなったな」となると来店頻度や注文数が減ることは容易に予想がつきます。まあ値上げしたことで微少ながら利益率は上がりますので、ある程度の売上減少分は吸収できるかもしれませんが…

 

 ここでちょっと意地悪な見方をすると、サイゼリヤが感染拡大予防という大義名分のもと、端数価格を止めることで今後の「値上げ」が容易になるのは事実です。ひょっとしたらこちらが本当の目的だったのではないかな…と勘ぐってしまいます。いずれにしても、今回の価格改定が支持されたかどうかは今後の売上が物語ってくれるでしょう。