ニュースの論点No.176 変わらないカッコ悪さ

 

 「AOKI、娯楽がスーツ越えへ カフェやカラオケ、22年度利益逆転」202099日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「紳士服大手のAOKIホールディングスがスーツ依存の経営からの脱却を急ぎ始めた。ネットカフェなど娯楽業の出店を増やし、20233月期の営業利益でスーツを超える稼ぎ頭に育てる」としています。

 

 記事でも触れられていますが、AOKI以外でも、はるやまが紳士服やクリーニング、理容店やマッサージ店などを入れた複合業態の「ほっとひと息ステーション」を23年までに100店舗に倍増させる計画としています。青山商事もスーツ売り場を縮小し、焼肉きんぐやダイソーなどを入れ複合店に。またフィットネスジムを併設した店舗も出てきています。

 

 もともとスーツ需要は減少傾向にあり、コロナ禍で需要減退にさらに拍車をかけた格好となりました。その中で、紳士服各社は立地や広い敷地を生かした複合業態戦略ともいうべき打ち手を展開し、生き残りをかけた勝負に出ているように見えます。

 

 その昔、いわゆる「カテゴリーキラー(ある特定の商品分野に的を絞って豊富な商品構成と低価格で販売する業態。専門量販店)」と呼ばれ、玩具のトイザらスや家電のヤマダ電機、衣料品のユニクロなどと一緒に、紳士服チェーンも当時の百貨店やGMS(総合スーパー)の当該カテゴリー売上を低下させ、部門廃止や縮小に追い込んだ業態として隆盛を誇っていました。

 

 が、時代の流れとともに、一般消費者の需要は大きく変遷し、商品自体の需要減少もさることながら、ネット通販が当たり前となった今、その業態すらも色あせ、わざわざ車で出向いて買い物をする意味も薄らいできています。

 

 往時にはカテゴリーを絞って商品を展開し、周辺の既存店売上を低下させていた店舗が、今度は来店目的をつくるためにカテゴリーを増やしていくのはなかなか皮肉なものではあります。

 

 とはいえこれが時代の流れであり、ひと頃流行った商品やサービス、業態などは必ずと言っていいほど廃れていきます。その時間軸はさまざまですが、これまでの経験を踏まえると、どんなに頑張っても10年~20年でライフサイクルは終了する印象です。

 

 それを裏付ける一つのデータとして、同日の日経新聞には「10年で稼ぎ頭交代 2割 主要300社」との記事もあり、事実として、2割の企業で10年の間に事業の稼ぎ頭が変わっているのです。しかも、稼ぎ頭が交代した企業全体の純利益成長率は、変わらなかった企業よりも大幅に高かったとのこと。

 

 今回の記事が意味することは、「変わらなければ生き残れない」という至極当然の結論となり、新味があるものではありません。しかしながら、これはゆるぎない真実であり、誰もが適用される原理原則です。

 

 つまり、嫌でも変わらなければ、確実に生き残ることはできないのです。経営者の皆さん。変わることはカッコ悪いことではありません。むしろ変わらないことのカッコ悪さを認識し、肝に銘じておきましょう。