ニュースの論点No.43 今日はどこのコーヒーにしますか?

 

 日本経済新聞は2018216日、「スタバ 職場に進出」と題した記事を掲載しました。記事によれば、「スターバックスコーヒージャパンは15日、オフィス内でコーヒーを販売すると発表した。企業と契約し、専用のコーヒーマシンを社員食堂などに設置する。」

 

 「カフェラテやカプチーノなど20種類を提供するコーヒーマシンを開発した。ホットとアイスに対応し、店舗と同じ味わいを楽しめるという。」「当初は常駐するスタッフが注文を受けて、コーヒーを提供する。価格は導入企業の判断となるが、カフェラテでSサイズ税別330円など店頭価格に近い水準を見込む。」とのこと。

 

 同様の形でネスレ日本が既に展開しているネスカフェアンバサダーがあります。こちらはオフィスに無料でコーヒーマシンを貸し出し、現在40万人の利用者がいます。一杯あたりの単価は約14円と非常に手頃で、毎日の利用でも負担が軽いサービスとなっています。

 

 また、コーヒーに関してはセブンイレブンが今年の3月に風味を全面刷新し、10億杯と言われる販売数をさらに伸ばすべく攻勢をかけています。

 

 ここで視点を変えて、日本人はいったいどれだけのコーヒーを飲んでいるのでしょうか。

少し古いですが、2012年のデータによれば、日本人一人当たりのコーヒー消費量は年間340杯ということです。コーヒー豆の輸入量は増加基調にあり、それを踏まえれば現在はもっと増え(後に計算してみました)、大体一人で1日一杯は飲んでいることになりそうですね(この数字は全人口で割っていますので、実際は一人当たりの消費量はまだ多くなります)

 

 雑学として、2012年時点において世界で一番コーヒー消費量が多い国は、ルクセンブルクで何と年間一人当たり2844杯!で、1日当たりにすると8杯飲む計算です。平均でこれですから、多く飲む人は信じられないくらいの量を消費しているのでしょう。さすがに体に障るような気がしますが…

 

 話を戻しますと、日本のコーヒー消費量は近年増加しています。2011年までは横ばいといえる推移でしたが、そこからコンビニコーヒーの伸びとともに消費量を伸ばしています。

(コーヒー消費量:2011420932トン→2016472535トン。12%の伸びであり、杯数換算で約40億杯伸びていることになります 112gで概算)

 

 コンビニコーヒーが本格的に登場したのが2011年頃(セブンイレブンは2013年)となり、現在のコンビニコーヒーの売上数は杯数換算で約20億杯と言われています。コーヒー消費量が伸びている大半の要因はコンビニコーヒーの売上であり、コンビニがけん引役として大きな役割を果たしています。他の要因としてはカフェチェーンの台頭も影響を与えているでしょう。喫茶店自体の数は減っていますが、スタバ、コメダ珈琲などは店舗数を順調に伸ばしています。

 

 さてここまで様々な数字を見てきました。冒頭のニュースでは、スタバがオフィス需要を取りに行くという内容でしたが、今後の動向はどうなるでしょうか。

 

 2011年ごろまではコーヒー消費量は増えておらず、コンビニコーヒーの展開と同時に消費量は増加しています。日本の人口は減少傾向にありますので、一人当たりの消費量が増えているのは誰が見ても明らかですね。これはコンビニという身近な存在が、安くておいしいコーヒーを飲む機会を増やしたことが消費量増加の大きな要因といって間違いないでしょう。

 

であれば日本の人口は減り続けるから市場は八方ふさがりになる、ということにはならず、ここからさらに一人当たりの消費量を増やすことができれば、まだまだ伸ばす余地はあるということでしょう。現にルクセンブルクは日本の8倍以上の量を飲んでますからね。

 

 まあ、だからといって日本人が18杯のコーヒーを飲むようにはならないでしょうね…ただ他国の状況を見ても、日本の今の一人当たりコーヒー消費量が1.5倍くらいになるのはそんなにおかしいことではないと思います。コンビニコーヒーの成果により、様々なアイデアで飲む機会を増やせば、現実に増えることが証明されたわけです。

 

 ですから、コーヒー市場のプレーヤーたる企業各社は、その需要を取り合うというよりも全体のパイを増やす取り組みとして戦略を考えていくべきだと私は思います。しかし現実には、コンビニコーヒーは全体のパイを増やしましたが、オフィス需要を取り込む動きは他社に追随するということであり、新たな価値とは言えない戦略ではないでしょうか。特にスタバはサードプレイスを標榜している企業であり、その時間を過ごす「場所」も重要な要素の一つです。

 

 ある程度は売れると思われますが、コーヒーマシンだけではなく、椅子やテーブル、その他の内装まで考えて展開しないと、逆にブランド価値が希薄化することもありえます。

 

 コンビニはすでにその数が飽和状態だと言われ続けており、現在はエキナカや学校、病院、そしてオフィスなどの「陣取り合戦」を繰り広げています。コンビニはその名の通り、利便性を追求することと陣地を広げるその動きは同じベクトルを向いているため、戦略としては間違いない方向性です。

 

 しかしスタバは「利便性」や「いつでもどこでも買える」ではなく、どちらかと言えば逆の価値を提供している(最近は違うかもしれませんが)はずです。すでにコンビニでもスタバの商品は売っていますので心配することもないとは思いますが、商品の供給量が増えれば増えるほどその価値が下がっていくことはすべての事象に通じる真理です。

 

 スタバに関しては、他者に追随するような「陣取り合戦」ではなく、独自路線で戦略を練っていただきたいところです。各社の今後の動きに注目していきたいと思います。