ニュースの論点No.49 食文化は簡単に変わらない

 

 読売新聞は2018331日、「タニタ減塩食堂、『塩分多めが習慣』秋田で閉店」と題した記事を掲載しました。記事によれば、「低カロリーで健康に配慮した定食メニューを提供してきた秋田市中通の『あきたタニタ食堂』が、きょう31日の営業を最後に閉店する。」「開店当初の客足はよかったが、その後は低迷が続いていた。地域に合わせたメニュー作りが十分でなかった(広報課)」とのこと。

 

 タニタ食堂は健康計測機器メーカーのタニタが東京丸の内に平成241月オープン。本社食堂のメニューを再現したヘルシー定食をオフィス街で提供するというコンセプトで女性客を中心に人気を博しました。そこからフランチャイズで全国に順次展開し、10店舗体制となっていましたが、あきたタニタ食堂が閉店することで9店舗となります。

 

 タニタ食堂としては初の閉店となります。秋田県は記事のタイトルにもあるように塩分摂取量が全国平均よりも多く、その影響からか、がん死亡率、脳血管疾患死亡率がワースト1位となっています。

 

 秋田県の塩分摂取量の多さは、年間を通して日照時間が少ないことや豪雪地帯であることなどから、食料を長期保存するために塩を多く使ってきた背景があります。そのため「濃い」味付けも必然的に多くなり、塩分過多な食文化が根付いていると言えます。このことから、タニタ食堂が提供する低カロリー、薄味のメニューが受け入れられない地域性があるのは間違いないでしょう。

 

 しかしながら、地域の食文化に合わなかったことだけが閉店の理由とは言えないのではないでしょうか。そもそも事前調査でそんなことはわかっていたはずです。むしろ秋田県の食習慣の改善に一役買うために出店した側面も少なからずありそうです。その証拠に秋田県はタニタ食堂に減塩教室の開催を委託するなど、協力関係を結んでいました。同県の佐竹知事は、「ヘルスセンター的な拠点になるかと期待したが残念だ」(同記事)と言っています。

 

 今さら言っても仕方がないですが、両者がもっと協力し、もう少し粘り強く発信していくことが必要だったと私は思います。特に秋田県は他人ごとのような印象を受けます。その地域の文化、特に食文化ともなると、それを変えていくのは一企業ではまず無理です。商売の枠を超えて官民問わず継続的に協力しなければ実現しないでしょう。

 

 タニタ食堂もビジネスだけで考えれば秋田県には出店しなかったかもしれません。私の憶測にすぎませんが、行政側が簡単に考えていたのではないのでしょうか。もちろんタニタ食堂の経営努力も当然必要です。しかし明らかにターゲットのいない中で、小手先のメニュー変更などではまさに焼け石に水の施策となるのは目に見えています。

 

 店舗ビジネスは、まず自社の経営努力を惜しみなくやりきり、顧客満足に伴う増収増益を果たし、社会のインフラとしての機能、また納税などで社会貢献をすることにその存在意義があります。

 

 一方で今回のような、食文化の改善でその地域の健康増進や健康寿命の延伸に貢献することも大きな使命の一つと言えます。この場合は先述のように一企業だけではなく、自治体や大学などさまざまな協力関係で実現することで、さらに大きな社会的意義があります。

 

 企業は利潤を追求する存在であり、きれいごとばかりでは経営は立ち行きません。しかし、人々の役に立たなければ生き残ってはいけません。本当に「役に立つ」とはどういうことか、ということを店舗経営者の皆さんも少し時間を作って考えてみてはいかがでしょうか。