ニュースの論点No.52 高価格と低価格、どちらのサービスを目指すのか

   日本経済新聞は2018412日、「個性競うホテル ロボVS人」と題した記事を掲載しました。記事によれば、「対照的な戦略を進める2社がホテル業界で勢力を拡大している。星野リゾートは11日、新たに展開する都市型ホテルに自社スタッフによる観光案内サービスを導入すると発表した。一方、エイチ・アイ・エスは省人化を徹底した『変なホテル』を全国展開する。おもてなしか効率化か。民泊との競争が始まり、ホテルの変革に2つの潮流が生まれつつある」と報じています。

 

 星野リゾートの星野佳路社長は「ビジネス客を捨て観光客に思い切ったサービスをする」と記者会見で伝えています。この案内サービスはGo-KINJO(ゴーキンジョ)と呼ばれ、例えばナイトカルチャーというテーマならスナックを案内するなど、地元の人しか知らない飲食店やイベントなどを有料で体験できる(同記事)とのこと。

 

 通常、ホテルの運営は宿泊や飲食など部門ごとに専門スタッフが分かれていますが、星野リゾートはそういったいわゆる単能工ではなく多能工、さらにその先を行く万能工として一人何役もこなすことで、スタッフの生産性向上と差別化を実現しようとしています。

 

 一方の「変なホテル」は星野リゾートとは逆に極力「人」を使わず、ロボットでその仕事を代替しています。新たな付加価値ではなく、作業的な仕事をロボットで効率化し、コスト削減による利益率向上がその肝になってきます。もちろん、ロボットによる運営の新規性はコト消費ともいえ、それがお客様にとって付加価値ともいえるでしょう。

 

 「変なホテル」は都市部への出店を強化し、今後35年で100か所を目指す(同記事)そうで、かなり意欲的な拡大戦略です。現在、様々な業種でネックとなっている人手不足が出店の足かせにならないことは、同社の拡大戦略にとって非常に有利に働いています。

 

 さて、この2社の展開方法は店舗ビジネスのどの業種でも当てはめることができる最高のケーススタディです。人を使ったきめ細やかなサービスか、ロボットによる徹底した効率化か、を自身の店舗や会社に当てはめることで、自社は今後どうしていくのか?を考える材料として活用できるのです。

 

 私もこのコラムで何回も申し上げている通り、今後の店舗ビジネスは2極化、つまり今回の記事にあるように「人、高価格、フルサービス」か「ロボット(機械化、AI)、低価格、最低限のサービス」とに分かれると考えています。その過渡期では、両者がミックスされた業態が多く登場すると思われますが、最終的には2極化の方向に収まるでしょう。

 

 というよりも、現時点でそう感じることはないでしょうか。コンビニやファストフード、ファストファッションは完全に自動化や機械化がされているとは言えませんが、生産の大部分は人が関与していない商品が多く存在します。それらは低価格であり、購入時に接客サービスなどはほとんどありません。一方で百貨店やミシュラン3つ星級のレストラン、オートクチュールのようなオーダーメイドの高級注文服などは人の手もかかり、高価格で非常に丁寧なサービスで提供されます。

 

 どちらがいいか悪いかというより、昔からあったその格差ともいうべきものが、テクノロジーの進展によりさらに加速して店舗ビジネスの2極化を促していると考えるべきです。

 

 自社はいったいどこへ向かうべきなのか。すべてを標準化し、徹底した自動化で数百店舗の多店舗展開を目指していくのか。人による手厚いサービスで、手作りの良さを全面に出し、簡単に真似されない少数店舗での展開をするのか。視点はほかにもありますが、中途半端にいくのがもっとも最悪な戦略です。

 

 飲食、サービス、小売、全ての店舗ビジネスにおいて、同様の変化が表れつつあります。経営者の皆さん、目指すべき方向を決めるのはあなた次第です。決めた方向へ全力で向かい、それを正解にするのが経営者の仕事なのです。