ニュースの論点No.55 高付加価値を生み出す方法

  

 日本経済新聞は2018513日、「客数・単価増9社どまり 小売り・外食40社分析 マックやファストリ、商品磨き 値上げ力」と題した記事を掲載しました。

 

 記事によれば、「小売り・外食の主要40社を対象に、入手可能な3月までのデータを使い客単価と客数の動きを分析したところ、75%にあたる30社で前年の同時期に比べ客単価が上がっていた。ただ、同時に客数も増やし売り上げ増につなげた勝ち組は9社どまり」と報じています。

 

 客数も客単価も増やしたのはマクドナルドやユニクロのファーストリテイリング、吉野家や良品計画、ドン・キホーテなどとなっています。

 

 マクドナルドは客単価が5%強上昇しており、けん引役は大型バーガーの「グラン」シリーズなど500円前後の高単価商品や、3月開始のプラス100円でパティを倍にできるバーガー「夜マック」。また、ファミリー層に的を絞った改装も奏功しています。

 

 ユニクロはヒートテックシリーズに加え、今冬は通常商品より2倍以上暖かくした「超極暖」が売れています。価格は長袖Tシャツで通常品の倍、税別1990円ですが、コストパフォーマンスが高いと人気です。(同記事)

 

 しかし客単価を上げた30社のうち21社は客数を落としており、いかに規模が大きく優れた人財を擁する大企業でも、両方を同時に上げるのは至難の業だと言えます。

 

 店舗ビジネスでは、売上=客数×客単価という構造で考えるのが一番わかりやすく、かつ効果的な施策を生み出しやすくなります。

 

 基本的なことですが、売上を上げるためには客数を伸ばすか、客単価を上げるか、その両方か、の3通りしかないわけです。ただ現実的には、先述したように客数、客単価の両方を同時に上げることは非常に難しく、いずれかに集中して戦略を作る必要があります。

 

 店舗ビジネスでよく行われる失敗例として、客数を増やして売上を上げるために「値下げ」をしてしまうことです。経営者の皆さんは耳にタコができるくらい聞かれているとは思いますが、安易な値下げをする店舗は無くなりません。安くすれば売れる、といった短絡的な考えが店舗の寿命を縮めるのです。

 

 値下げはイコール店舗の利益を削っています。削った利益はどこにしわ寄せがいくのでしょうか?  …ほぼ間違いなく人件費にいきます。店舗の力の源である人への投資が少なくなればなるほど、その体力は蝕まれていきます。そして、売れなくなればさらに安売りをするという悪循環に陥ってしまうのです。

 

 戦略的な値付けで、最初から利益がしっかりと出るように考えられた価格であれば、低価格でも問題ないでしょう。ですが、行き当たりばったりのバーゲンセールは自分で自分の首を絞めているようなものです。絶対にするべきではありません。

 

 そもそも中小企業は大企業と比較すると使える経営資源が限られており、その正攻法としては付加価値をつける、すなわち価格を上げて客単価を上げることが多くの場合推奨されます。価格を上げることは、利益を増やすことにもつながり、安定した経営をするうえでも非常に重要な戦略となります。

 

 ただ、価格を上げると言ってもそう簡単ではありません。顧客にとってその価値が伝わらなければ、逆に売り上げを落とすことになり、客数も同時に減ってしまい、立て直すのに一苦労、あるいはそのままフェードアウト… と言ったことにもなりかねません。1020円の値上げでもお客様は敏感に反応します。それが低価格業態であればなおさらです。

 

 自社、自店が顧客から見てどういうイメージを持たれているのか、どういうことが求められているのか、この顧客視点を抜きにしての値上げは、先述の値下げと同様、誰のためにもなりません。

 

 値下げも値上げも難しいのであればどうすれば…。

 

 まず客数と客単価を別々に考えるのではなく、一つにつながるストーリーとして考えるようにしてください。先ほどお伝えした、客数と客単価のいずれかに集中するということは、別々という意味ではなく、どちらをどう上げるために、双方をどうやって組み合わせるのか、ということです。

 

 飲食店であれば、単純に今あるメニューの素材レベルを上げ、原価を高くしたからといって、店頭価格まで上げたら今までのお客様から納得は得られないでしょう。しかもお客様はその味の差にほとんど気付かないのです。逆に高くなったことで、店から足は遠のきます。既存のお客様はそこを求めていないわけですから。

 

 上記のように、商品単価それだけを変えても、思うような効果はほとんど得られません。それどころかお客様はだんだんと来なくなってしまいます。しっかりとストーリー、流れを考えて、全体を見直さないと店舗がちぐはぐな感じになってしまいます。高付加価値かつ高単価の戦略を取るためには、業態を変えるくらいの覚悟が必要になってきます。

 

 例えばこれまでサラリーマン向けの大衆居酒屋業態だった店舗を、高付加価値、高単価の業態に変えるためには、まずターゲットを変える必要があります。つまり「顧客は誰か」をはっきりとさせるということです。ストーリーはそこから始まります。

 

 そしてターゲットが「40代以上の富裕なエグゼクティブ層」向けにすることを決めたら、メニューを考案し、素材のレベルを上げ、盛り付けを変え、トレーニングにより接客サービスのレベルを上げ、さらにはちょっとした改装も施し、付加価値を付けることでようやくお客様が納得する、なおかつ利益も出るような単価にすることができます。

 

 単価アップありき、客数増ありきの狭い視野での施策は、短期の販促程度の効果もないと言え、さらにはそれをやることで高い確率で店舗の価値を壊します。

 

 店舗経営者の皆さんは、常に全体を見て、全ての商品、サービスが途切れなくつながる状態をつくりあげるようにしましょう。お客様に支持される高付加価値は、全体のストーリーで生み出されるものなのです。