ニュースの論点No.56 外食と中食は敵同士?

  日本経済新聞は2018522日、「中食市場10兆円超え」と題した記事を掲載しました。記事によれば、「総菜や弁当などの「中食」市場規模が2017年に初めて10兆円を超えた。共働き世帯が増加し「時短需要」が拡大しているのが背景だ。」「年25兆円ある外食市場の3分の1超の規模に膨らみ、飲食小売りの成長をけん引している。」と報じています。

 

 外食産業の市場規模は現在約25兆円です。1997年の29兆円をピークに2012年には23兆円と大きく減少したものの、そこから現在まで徐々にではありますが再び伸びてきています。

 

 一方の中食市場は拡大基調が続き、1997年の3.6兆円から現在は10兆円と3倍近くにまで規模が拡大しています。20年前は中食市場が外食市場の8分の1だったのですが、現在は3分の1まで迫ってきているということになります。

 

 その分外食、中食市場は競争が激しくなっていることは言うまでもありません。とはいえ私に言わせれば外食、中食という区切り方はあまり意味がなく、飲食店でもテイクアウトや宅配をおこなっていますし、コンビニやスーパーでもイートインやグローサラントなど、店内での飲食空間を提供しています。

 

 数字上では外食産業が中食産業に食われつつあると見ることもできますが、実際はそれぞれが複雑に絡み合っており、そう単純なことではないと言えるでしょう。見方を変えれば、二つの市場を合わせた「非自炊市場」ともいうべき市場が、この20年で規模を2兆円以上増やしていると言えるわけです。

 

 昔からある業種や業態の括りで見てしまうと、誤った判断をしかねません。すでに言い古されていることですが、今や業種、業態の壁はありません。乱暴な言い方をすれば、やろうと思えば誰でもいつでも何でもできる世の中になっているのです。

 

 それを変なこだわりで、うちは○○業だから○○はしない。○○などもってのほかだ。と凝り固まっていると、間違いなく時代に取り残されることになります。こだわること自体は非常に大事であり、それが強みの源泉にもなりえますが、こだわるのは業種や業態ではなく、「自社が提供するモノやサービスは、顧客にとって高い価値を生み出し、その問題を解決し、満足を感じてもらえているか」ということにつきます。

 

 何でもかんでも流行りものを取り入れるのはどうかと思いますが、少なくとも現在展開中の事業との関連性が高く、比較的少ない投資でできるものはチャレンジしていくべきです。飲食店の宅配事業参入もその一つです。最近は地域によって宅配部分をウーバーなどに委託することで容易に参入できる環境になっています。

 

 外食、中食各社が提供するメニューのクオリティも差がなくなってきています。お客様にとってみれば、選択肢の幅が広がったことで、状況に応じて使い分けをすることが可能になりました。

 

 この状況でお客様に支持されるには、相当な経営努力が必要になってきます。お客様に対してのアプローチがリアル店舗でのサービス提供だけでは、競合の中に埋もれてしまうことも考えられます。そうなると、お客様はその店があることすら気付いてくれません。

 

 「うちは居酒屋だから、カフェだから、ラーメン屋だから… 店に来るお客様しか相手にしない」「持ち帰りもお断り」「宅配もしない」というのはまったくの勝手ですが、コンビニやスーパーにお客様がとられている…と嘆いている暇があれば、変化することを真剣に考えるべきでしょう。

 

 指をくわえてみているだけでは、何も変わらないばかりか状況は必ず悪くなります。ぜひ経営者の皆さんは良いこだわりを持ちつつ、柔軟な姿勢で今を乗り切っていただきたいと思います。