ニュースの論点No.57 「安ければ売れる」という幻想

  日本経済新聞は2018528日、「ファミマ、ドンキ流店舗」と題した記事を掲載しました。記事によれば、「ファミリーマートはディスカウントストア ドン・キホーテ と連携したコンビニエンスストアを展開する。6月から都内でドンキの雑貨や日用品2~3千点を陳列する実験を始める。」

 

 「実験店では4~5千点の商品を陳列し、このうち2~3千点をドンキから仕入れる。天井近くまで陳列するなど、ドンキ特有の売り場作りの手法を導入する。」と報じています。

 ドンキのPBである「情熱価格」も販売するとのことで、陳列する商品内容や割合から判断すれば、ファミマというよりドンキ色が強い店舗になりそうです。

 

 ドン・キホーテは1989年に1号店を開業し、現在日本には354店舗、米国に14店舗展開しています。20176月期の決算では売上高8287億円で前年比9.1%増。開業以来28期連続の増収増益となっています。

 

 28期連続の増収増益はかなりすごいことです。小売業界は近年、コンビニやドラッグストアが伸びていますが、食品スーパー、百貨店など旧態依然とした業態ではじわじわとその領域を侵されてきています。その中でドン・キホーテはどの業態ともほとんど競合せず、独自路線を走り成長してきました。

 

 そもそもドン・キホーテはディスカウントストアとして安値販売を得意としていますが、その商品のバリエーションや陳列方法などで他店との差別化ができており、その魅力からリピーターの数も非常に多いと感じます。ただ安いから、という理由だけでは28期連続の増収増益はまず実現できません。

 

 しかし考えてみれば、ドン・キホーテにもPBがあるとはいえ、基本的には既存の商品を仕入れて消費者に販売する小売業です。その意味では競合他社と同じ商品を取り扱っています。実際に競合他社と同じ商品がいくつもあるのを私自身も確認しています。にもかかわらずドンキのように売れる店と他社でそれほどでもない店がでてくるのは不思議なものです。

 

 天井まで積み上げる圧縮陳列と呼ばれる独自の見せ方や、圧倒的な商品のバリエーション、そして安値での販売はドンキの強さの要因としてしばしば用いられますが、他社がそのまま真似をしてもおそらくドンキにはかなわないでしょう。それ以外の目に見えない細かい戦略や戦術のつながり、そして行動の積み重ねがあってこその今の状態なのです。

 

 一方のファミリーマートも競合が激しいコンビニの中で、様々な施策を打って攻勢を強めています。イートインスペースの拡充、ジムの併設、コインランドリーの併設、エアビーとの提携などなど… この動きからはファミリーマートのコンビニ業界に対する危機感を強く感じます。

 

 今回のコラボレーションはドン・キホーテとファミリーマートが資本、業務提携したことで実現しました。だからといって単にファミリーマートをドンキ化しただけではまず失敗するでしょう。それでは一番中途半端なことになります。顧客のことを考えていない、供給者の論理の最たるものですね。コンビニが厳しいからと言ってドン・キホーテに変えるのはあまりに安易です(おそらく最初は売れますが)。

 

ただ先述のように、お互いに攻めの姿勢が見えます。ですからファミマのドンキ化といった安易な戦略はまず取らないでしょう。勢いのある2社が組むことで、それだけではない新たな化学反応を起こしてほしいと思います。