ニュースの論点No.59 クレーマーが集まる店、避ける店

  「客から迷惑行為 8割超、家電、百貨店の従業員」 日本経済新聞は2018613日、こう題した記事を掲載しました。記事によれば、「家電量販店や百貨店の従業員の約8割が客から暴言や無理な要求などの迷惑行為を受けていたことが、流通業などの労働組合でつくるUAゼンセンの調査で分かった」

 

 「高額商品が多く、接客時間が長くなりがちなことが一因とみられ、スーパーなどほかのサービス業と比べて多かった。対応が現場任せの企業も多く、法整備を求める声も上がっている」と報じています。

 

 調査は5万人に対して行われており、迷惑行為に遭遇したことがあると答えたのは百貨店が84.5%、家電関連が82.9%、スーパーが61.2%で、いずれも高い割合で迷惑行為にあっていることがわかりました。

 

 具体的な迷惑行為として、「住宅事情などから設置や設定できないものを不良品として交換を要求された」「交通費の請求を拒否したら『ネットに不良品を販売している店ですと書きます』と脅された」などが挙げられており、現場の従業員が謝り続けてやり過ごすケースがほとんどということです。(同記事)

 

 私も百貨店をはじめ郊外型SC、路面店など様々な立地で店舗を展開しています。その中で当然クレームは発生しますが、ほとんどは店舗側の商品や接客に問題があったことが原因の正当なクレームです。中にはクレーマーと思しき人からのいわれのない言いがかりはありますが、ごく少数です。

 

 正当なクレームを言われる大半のお客様は、実はあまり言いたくないと思っています。関係性が悪化することで、今後来店し辛くなるのでは…と懸念されることが大きな理由です。それでも商品の不具合や、接客対応の未熟さをいやいやながらも伝えてこられます。店舗にとってそれは貴重な改善策の宝庫であり、店舗が成長する一番の薬になります。

 

 記事にあるような悪質なクレーマーは本当に少数派です。ただ、そういう人はどの店に行ってもクレームをつけるタイプのため、少数派でも多くの店舗、スタッフに絡んでいることが迷惑行為を受けるスタッフの人数を底上げしていると思われます。

 

 明らかにおかしいクレーム(迷惑行為)に対しては断固とした態度で臨むべきであり、上司への報告はもとより場合によっては通報することも必要でしょう。法整備で対応できるとは思えませんので、企業として細かな対応策をつくっておくことが肝要です。

 

 また、悪質なクレーマーは「言いやすそうな人」に近づく傾向があります。たとえば、未熟な新人や若い女性などがそうですね。基本的なことですが、スタッフを守るためにもスキのない人員体制(年齢、経験、性別などのバランス)で解決を図るのが唯一の道です。

 

 ただし、繰り返しになりますが、クレーム原因の大半は店舗側にあります。何でもかんでも迷惑行為と取ってしまうと、店舗の成長は見込めなくなります。線引きは非常に難しいのですが、しっかりと見極めて、こちらに非があれば真摯に受け止め、早急に改善する必要があります。

 

 もう言い古されている事実で、経営者にとってみれば当たり前の話ですが、クレームから上顧客様になる人は本当に多く存在します。これは私の経験からも言えることで、商品の不具合、配送の遅れ、接客時の不適切な対応など、どんなクレームでも受けた後の対応ですべてが決まります。その対応がマズければ二度とご利用いただけません。しかし、真摯に対応し、ご納得のうえで解決できれば高い確率で顧客様になっていただけるのです。

 

 ですので「正当なクレーム」を「迷惑行為」ととってしまうことはかなりの損失です。その逆もそうで、単なる「迷惑行為」を「正当なクレーム」としてしまうとそのクレーマーは増長し、さらなる無理難題を吹っかけてきます。

 

 これまでの経験として、また様々な状況を見聞きして言えることですが、仕事のできる店長やベテランスタッフがクレームや迷惑行為を受けることはあまりありません。その経験上接客レベルが高いのはもちろんですが、商品の不具合や案件の進捗状況などの違和感を事前に察知し対応できるため、そのスキが生まれにくいことが理由でしょう。

 

 そのため、クレーマーは先述のように未熟なスタッフや自分より弱いと思われる人に対してその不満をぶつけてきます。当然若く未熟なスタッフは「正当なクレーム」でも「迷惑行為」でも適切な対応をとることができないので、上司に報告し、上司の指示を仰ぎます。そこできれいに終わればいいのですが、何しろ新人です。指示を受けたとしても、お詫びの仕方や説明、フォローなどうまくできるわけがありません。

 

 そこにつけこんで、迷惑行為をするようなクレーマーであれば終わりなき要求がはじまります。たとえそれが正当なクレームであったとしても、話がこじれてしまい、2次、3次被害をまねいてしまうのです。

 

 ですから、クレーム対応のマニュアルはもとより、新人スタッフをできる限り早く成長させるような育成マニュアルは絶対的に必要になります。そうしなければ、正当なクレームの対応はできず、優良なお客様も離れていきます。また迷惑行為に対しても正しい対処ができないため、クレーマーの温床となるような店舗となる恐れがあります。

 

 にもかかわらず現場に対応を任せっぱなしの会社は非常に多いと感じます。記事にもあるような、現場の従業員が謝り続けて、やり過ごすことで根本解決になるはずがありません。

 

 本来ならば会社の価値観、つまり理念を織り込んだ育成マニュアルやクレーム対応マニュアルをつくり、それをしっかりとスタッフに教え込むことがスタートであり基礎となります。そのうえで、経験を積むことではじめて現場で対応が可能になるのです。

 

 スキだらけの店は売上も取れませんが、さらに悪いことに、望まないお客様を呼び寄せてしまいます。そうなると当然余計な仕事ばかりが増え、売上など二の次。ますます状況は悪化します。こうならないためにも、一本筋の通った理念、その理念を織り込んだマニュアルをつくりましょう。これは繁盛店舗にはずせない絶対条件なのです。