ニュースの論点No.63 お客様に働いてもらうのは悪いこと?

 

 「セルフ外食、破格のグルメ エンタメ感でコスパ最強」201876日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「喫茶店やバイキングではおなじみのセルフサービス。今、フレンチやワインなど意外な飲食店にまで広がりを見せている」

 

 「名物ギャルソンや看板娘との出会いは減るかもしれないが、人件費を抑えたコスパはばっちり。店舗、従業員、客の三方よしと笑顔が広がっている」とのこと。

 

 具体的なサービス形式としては、フレンチではお客が写真付きメニューを見て券売機で職権を購入し、カウンターで受け取り、食べ終わるとお客自身で食器を下げる流れとなっています。またワインバルでは飲み放題30290円で店舗のワイン樽100個の中から、自分の好きな銘柄を好きなだけ注げるように。別の店では、リキュールや焼酎が入ったサーバーから自分でカクテルや好みの割方で酒を作ることができます。

 

 記事のタイトルにもあるように「セルフ形式だからこその楽しさ」が大学生メインの客層に受け、各店賑わいを見せているようです。また、セルフサービスで軽くなった人件費の分を食材の原価に回し、コスパに優れた料理を提供することで単なる安居酒屋や立ち飲みではない付加価値を提供していると言えます。

 

 セルフ外食はほかにも、自分で材料を選び、衣をつけて揚げるセルフ串揚げや、自分で焼き上げるセルフ焼鳥などもあり、全国的にじわじわと広がりを見せています。

 

 私もセルフ形式の店は数回利用したことがありますが、記事にもあるように、それがわずらわしいというよりも自分で作る楽しさがあり、同伴者との会話が弾む印象が強く残っています。

 

 ところでセルフ形式でいえばもともとあったのが焼肉店です。今も昔も外食としての人気は衰えず、近年では肉自体の人気もあり、さらに勢いを増しています。また、焼肉ではありませんが、肉バルなどは全国どこでも見るようになりました。

 

 話を戻しますと、その焼肉店の例でもいえることですが、セルフ形式は自分で焼く、揚げる、煮る、と普段なら面倒くさい調理が、その時は不思議なことにエンターテインメントになり、さらに出来立てをいただくことでお客側の満足度は飛躍的に上がります。そこにセルフ形式の楽しさが凝縮されていると言えます。

 

 その一方で、店舗ビジネスではテクノロジーの進展のもと、作業のさまざまな自動化も進みつつあります。それらとお客様に作業の一部を任せるセルフ形式とを組み合わせることで、店舗に常駐するスタッフ数を相当数削減することが可能になり、昨今の大きな課題である人手不足や生産性向上に一役買っています。

 

 ですがここは注意が必要です。自分たちが楽をしようと思って安易にセルフ形式を導入しても、お客様からの理解はなかなか得られないでしょう。自動化も同様です。

 

 もちろん、スタッフに対するムダな作業負担は削減するべきですが、お客様にとって、店舗スタッフが提供するからこそ価値があった仕事にもかかわらず、それを何も考えずに自動化やセルフ化すると逆効果となってしまいます。強みを失ってしまうことにもなりかねません。

 

 人手不足だからと単なる自動化やセルフ化を進めるような業務改善策では、先々の業績は尻すぼみになります。その点、今回の記事のような、お客様が一緒に楽しめるように巻き込んだセルフサービスは非常に良い解決策の一つだと思います。

 

 お客様が感じる価値は、意外なところに転がっています。しっかりと考えて活用すれば、セルフ形式はお客様の満足度向上と自店の問題を同時に解決できる策として、圧倒的な効果を発揮することは間違いありません。