ニュースの論点No.65 朝ビールは是か非か

 

 「飲む朝活でパワーチャージ 朝食に客の半分が注文」2018723日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「早起きして朝の時間を有効に使う朝活。しかし、朝からのヨガやお勉強などはもう古い。最近クールなのが朝ビール。もちろん、夜のようにガッツリ飲んで酔いつぶれるのではない。少量のビールを体内に入れることで、その日の元気をもらうパワーブレックファースト」とのこと。

 

 記事中では、都内のIT企業で問題解決に集中したい時に朝ビールをしたことで、前日の夜に解決できなかったウェブサイトの改善策がスラスラと浮かんだ事例や、ビアレストランで朝食セットにビールを一緒に注文するお客が増えており、その客層も訪日外国人や近所の主婦、取引先と商談をこなすサラリーマンなど、多様化していると紹介しています。

 

 なかなかアグレッシブで左党が喜びそうな記事ですね。私も飲むこと自体は好きですが、さすがにまだこの領域には足を踏み入れていません。そもそも仕事中の朝や昼に飲むには、職場内や取引先など周囲の理解が必要となってきます。欧米では地域によって昼からワインやビール飲む文化もありますが、日本ではまだまだ理解を示す人は少ないでしょう。

 

 それに加えて、その効果のほどは個人個人の主観に委ねられ、飲み方を自分でコントロールができなければ最悪酔いつぶれることもありえます。そのためこの動きが一般化することはあまり考えられませんが、職場ではルールを決めたうえで実験的にやってみるのは面白いかもしれません。

 

 一方、店舗側としては、アルコールを出す時間帯を増やすことで客単価が上がり、売上アップに貢献しますので、新たな施策として取り入れたいところだと思います。最近は昼飲みを打ち出す店舗が増えていますので、さらに時間を前倒しし、競合に先んじてサービスを提供するのも一つの手となるでしょう。

 

 時間の前倒しをする場合は客層の変化も想定する必要があります。朝から飲むという習慣がある人は自店が求めるような客層と大きく異なる可能性が高く、店舗の雰囲気が変わることで既存の顧客が離れていくことも考えられます。24時間営業や朝8時に閉店する飲食店との違いは必要であり、店舗の雰囲気を壊さないようにすることが重視されます(一部の店を批判するものではありません。棲み分けの問題です)。

 

 ですから最初は曜日や時間を限定し、既存の顧客に対してテストをしたうえで徐々に展開していく方法を取ったほうが良いでしょう。あくまで非日常の演出としてのサービスにした方が健全であり、既存サービスのプラスアルファとして提供するのが自然だと思います。

 

 さて、若年層のアルコール離れが言われて久しいですが、データでは20代男性は約4割がほとんど飲まないそうです(ほぼ毎日飲む人は1割)。また20代女性はほぼ5割が飲まないとのこと(ほぼ毎日飲むは0.5割。バザール2016)。それに比べて50代男性は5割近くがほぼ毎日飲み(週5から6以上)、50代女性も約2割がほぼ毎日飲んでいます。データからその差は歴然としています。

 

 この状況の中で、飲食店はさまざまな施策を考え、実践していると言えます。飲む人が増えたというよりは、少なくなったパイを取り合っているとも取れます。朝ビールや昼飲みをはじめ、牛丼チェーン店のちょい飲み、もはや定番化したハッピーアワーなど、あの手この手でお客様のニーズを掘り起こしています。

 

 今回の記事はその一側面でもあり、ごく一部を切り取ったものですが、商売として考えると示唆に富んでいるともいえます。朝からビールを飲むのは、いわばタブーであり実際にすると罪悪感を伴います(普通は)。そこをあえてやることでお客様の開拓につながることもあるのです。

 

 この事例は、あれはダメ、これはダメ、という発想から抜け出すきっかけとしても使えます。経営者の皆さんもぜひ、自店でタブーやNGとなっていることをもう一度洗い直してみてください。そこには見逃していたチャンスが転がっているかもしれないのです。誰もが考えないところに、競合の一歩先行くサービスの種があるのです。