ニュースの論点No.66 セールの功罪

 

 「夏のセール初の2回目 百貨店、アパレル要請で」2018728日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「全国各地の百貨店は27日、今年2回目となる夏のセールを始めた。1シーズンに2回セールを実施するのは初めて」「これまで年1回だった夏のセールを2回開く企画はアパレル業界が百貨店業界に要請した」とのこと。

 

 例年夏のセールは7月初旬から始まり、中旬には夏物在庫がショートします。まだ暑いにもかかわらず、店頭は夏物ではなく秋物中心となることで、アパレル各社は8月中旬までの時期の戦略が立てづらくなっていました。また、盛夏物の正価での販売時期も短くなっていたことから、6月末は春、初夏物を中心としたセールとし、7月末より盛夏、晩夏物のセールをすることで「暑さが本格化する時期に消費者ニーズに合った商品を提供できる(高島屋コメント 同記事)」としています。

 

 さて、皆さんはこのニュースを聞いてどう思われるでしょうか?おそらく大多数の人が「ふーん」程度の反応でしょう。しかし私に言わせれば、こんな小手先の施策では何も変わらないどころか、100%売り手側の自己都合であり、結局誰の得にもならない愚策です。「消費者をバカにしているのか!」と声を大にして言いたくなります。

 

 お客様はいったいいつ買えばいいのでしょうか?正価とは何なのでしょうか?安くなるのが分かっているのに、正価で購入するのはバカバカしいと思う人が大半でしょう。そもそもメーカーや小売店は正価をどのように決めているのでしょうか?1ヶ月程度でセール価格になる商品には魅力があるのでしょうか?こんなことを毎年やるのでしょうか?このあたりを透明化しなければ、お客様はどんどん離れていくだけでしょう。

 

 セールを2回に分けるのも愚策ですが、他にも、セール期間中に戦略商品などと称して、既存商品より23割安価な新商品を投入(当然質は落ちます。多くの場合、安いだけでお得ではありません。ブランド価値も棄損し、お客様も結果的に損をします)したり、セール直前に通常価格で投入した商品をすぐに値下げ(値下げしても十分利益が出る。要するに正価を高く設定している)してお得なセール品に見せたり…といったことがまかり通っているのです。

 

 小売店やメーカーのモラルもさることながら、このような行為は度が過ぎれば違法行為となり、場合によっては罰則(1年以下の懲役又は300万円以下の罰金)が科されます。特に短期間で値下げするのは、「景品表示法」の二重価格表示となり、有利誤認表示に該当すると判断される可能性もあります。

 

 二重価格表示については、次のルールがあります。

 

【販売開始から8週間以上の場合】

過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば過去の販売価格として表示できます。

 

【販売開始から8週間未満の場合】

販売時期の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示できます。

 

【販売した最後の日から2週間以上経過している場合】

過去の販売価格として表示することは原則としてできません。

 

【販売開始から2週間未満の場合】

過去の販売価格として表示することは原則としてできません。

 

 少しややこしいですが、2週間前に販売開始した商品は、過去の販売価格として表示できないことをまず覚えておきましょう。そもそも2週間で値下げするような商品は値付けに問題があります。商品がかわいそうですね。同様に1ヶ月ほどで値下げするのも、違法ではないですが、顧客の信用を著しく落とすことになるでしょう。

 

 とにかく、セールそのものを戦略になると勘違いするのは、商品の開発、生産、販売フェーズのいずれか、またはそのすべてに問題があるのです。もちろん、すべてが完璧な状態にはなりませんが、売れ残りを加味した価格設定や、販売時期をこねくりまわす戦略もどきでは何も解決しません。

 

 そもそもセールはしないに越したことはありません。正価で買われたお客様に対して失礼です。それでも、在庫を減らすには値下げをする以外にないのかもしれませんが、結局自社の利益を削るだけであり、先述したようにブランド価値も棄損します。さらにお客様の信用を無くすことにもなり、一時的な売上と在庫処分のために相当なツケを払うことになるのです。

 

 現場に立つと分かりますが、普段正価で買われるお客様は、セール時にあまり来店されない、あるいは来店されてもそんなに買い物はされずに、スタッフと話だけして帰られるパターンが多くあります。逆に、普段はあまり見ないお客様で、セールの時だけ来店され、時間をかけて購入される方もいらっしゃいます。

 

 これは良し悪しではなく、価値観の問題であり、店舗としては正価で売る努力をしなければなりませんし、価値観が合うからこそお客様は正価で買われます。そういうお客様を大事にしていくべきなのは火を見るよりも明らかであり、異論をはさむ余地はないでしょう。しかし、定期的にセールを行うと様々な価値観のお客様が増え、現場スタッフも疲弊します。これまでの経験上、安さを求めるお客様はクレームも多い傾向です。

 

 であればこそ、セールは短期集中で行く必要があり、だらだらとやるのは愚策です。2回に分けることなど言語道断です。繰り返しになりますが、セールは戦略とはなりえません。セールは単なるニーズの読み違え、値付けの失敗の結果です。つまるところ敗戦処理ですから、素早く実行することが肝心で、いたずらに長引かせることは傷を広げるだけです。

 

 店舗経営者の皆さんは、十分に考えてセールや値下げを実行するようにしましょう。でなければ、既存の顧客が離れていくリスクが相当大きくなります。