ニュースの論点No.67 軽減税率への対応の仕方で表れるもの

  「軽減税率、悩むスーパー」「店内飲食、持ち帰りで違い 財務省 税込み価格同じに」201885日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「201910月に予定される消費税率引き上げまで1年余りとなり、小売業界が軽減税率への準備を本格化してきた。食料品を持ち帰るか店内で食べるかで顧客が払う消費税率が異なるので、スーパーのレジ清算などに混乱が懸念されるためだ。」

 

 「イートイン専用レジなど対策を練るものの妙案は乏しく、財務省は本体価格を調整して税込み価格を一つにそろえる『疑似一物一価』ともいえる価格設定を小売店に推奨している」と報じています。

 

 記事にもある通り、消費税は201910月に8%から10%に引き上げられます。それにともない、低所得者対策として軽減税率制度が導入される予定で、食料品や新聞などの税率を現状の8%のままに据え置きます。これは低所得者ほど収入に占める食費の割合が大きく、消費税の負担感がより重いことから、それを是正するための対策と説明されています。

 

 もうすでに決定していることなので、制度についてあれこれと言ってもしょうがないのですが、それでも言わせてもらえば、軽減税率制度は低所得者対策としてたいして意味をなさないでしょう。単に企業の事務負担が増え、軽減した分の税収がムダに減るだけの制度となると私は思います。

 

 2014年の総務省統計局のデータによれば、二人以上の勤労者世帯で年間収入を五つに分けた家計収支では、年収が上がるごとに食料品に使う金額は上がっていきます。第1階級(最も低い)の年収436万以下の世帯では、食費は月間53975円となっており、また第5階級(最も高い)の年収909万以上の世帯では、90430円となっています。

 

 この数字に、単純に2%の軽減税率を当てはめると、第1階級の負担軽減額は12945円、第5階級の負担軽減額は21703円となります。確かに所得に対する軽減額の割合は低所得世帯の方が高くなりますが、微々たるものです。結局、低所得世帯には少額の、高所得世帯には高額の現金給付をしたのと同じ効果となり(約8000円高所得世帯の方が多い)、低所得者対策としての体をなしていません。

 

 他にも、生涯賃金ベースで考えれば消費税の逆進性(消費税率が上がると、低所得者ほど食料品などの購入費割合が高くなり、高所得者より税負担率が大きくなること)はほとんど消えてなくなるなど、軽減税率に対してはその効果が疑問視されている意見が多々あります。

 

 しかしながら、もう決定している制度なので、批判的な意見はここまでにしておきます。

 

 さて、実務面においては、特にスーパーなど大量に食料品を販売するような業態は非常に負担が増えるでしょう。持ち帰りをするといったお客様が店内で飲食することも考えられ、様々な対策が必要になってきます。

 

 それに対して、財務省が小売店側に推奨しているのが、「疑似一物一価」ともいえる仕組みです。イートインと持ち帰りで選択が分かれやすい商品は本体価格を調整し、どこで食べても税込み価格が同じになるように設定する仕組みとなります。

 

 具体的には本体価格をイートイン(税率10%)なら低め、持ち帰り(8%)なら高めに設定することになり、「客に合理的に説明するのが難しい」(同記事)との声も上がっています。

 

 とはいえ何も対策をしなければ、イートインにするお客様は確実に減るでしょう。最近ではコンビニ、スーパーでは飲食スペースを設け、集客や売上アップのための工夫をしていましたが、その流れが止まってしまう恐れがあります。また外食チェーンでも持ち帰りが増えることも考えられます。

 

 ここで視点を変えてみましょう。ヨーロッパ各国では付加価値税(消費税)の標準税率が日本に比べ非常に高く、フランス20%、ドイツ19%、イギリス20%、スウェーデン25%となっています。対する軽減税率はフランスでは生活必需品を中心に10%、5.5%、2.1%と細かく分かれており、ドイツでは食糧品などが7%、イギリスでは食料品などはゼロ税率です。スウェーデンでは食料品などは12%であり、どの国も標準税率から軽減する率の差が非常に大きくなっています(少なくとも10%以上)。

 

 一方、日本ではその差は2%です。ヨーロッパ各国の数字からすると、たとえ疑似一物一価にしても、そこまでの違和感を生じない数字ではないでしょうか(もちろん感じ方は人によりますが)。

 

 このことから、おそらくではありますが、日本ではこの「疑似一物一価」を採用する企業が多くなるのではないかと推測できます。お客様の理解を得、さらに現場の混乱を抑えるためにはこの方法が一番有効だと感じます。

 

いずれにしても、店舗ビジネス経営者は答えを出すべき時が来ています。

ここでの対応の仕方で、企業の価値観がはっきりと表れるのは間違いありません。

まわりに流されず、信念をもって決断するようにしてください。