ニュースの論点No.71 覆面調査は役に立つのか

 「全国飲食店を覆面調査 ぐるなび 接客など評価・報告」

 201895日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「ぐるなびは、飲食店の利用客や従業員の満足度を向上させるための調査プログラムを全国で始めた。一般消費者が覆面調査員として飲食店を訪れて店の課題を報告し改善につなげる。」とのこと。

 

 現在、覆面調査は各店舗が直接調査会社に依頼し、直接その結果報告を受け取る例が大半だと思われます。今回、ぐるなび主導(店舗調査会社と提携)で覆面調査をすることは、店舗経営者にとってみれば、わざわざ調査会社を調べて頼むことに比べれば調査依頼のハードルがぐっと下がります。なおかつ調査により、ぐるなびのレビューだけでは得られない店舗の評価を知ることができ、店舗経営の改善に一役立つと考えられるため、動機づけの面からも経営者の後押しをするでしょう。

 

 覆面調査は店舗の今を切り取って見ることができ、そのレベルをある程度客観的に知ることができるなどのメリットもありますが、デメリットも当然あります。一番は調査員の質がバラバラだということでしょう。一般消費者の素直な意見がそのまま反映されているとは限らず、調査員にも様々なバイアスがかかっているため、全てを鵜呑みにすることはできません。

 

 また、偏りのある調査結果をもとにスタッフに対する指導を行ってしまうと、店舗の雰囲気も悪くなり、最悪の場合スタッフの退職にもつながります。あくまで参考としての調査結果であり、それを活かすためには、経営者自身のデータを解釈するリテラシーが必要となります。

 

 リテラシーを持つためには、経営者が現場を知っておくことです。少なくとも週に1回は現場を見ること。そしてスタッフとコミュニケーションを図ること。そうしなければ、覆面調査の結果だけで判断してしまい、誰も納得できない全く頓珍漢な改善策を立案してしまうことになります。

 

 そんな改善策は誰も実行しないため、ますます経営者と現場の距離が離れていくことになります。経営者が現場を知っていれば、調査結果と自身の把握している店舗の評価とのズレを必ず感じることになります。なぜズレているのか?を考えることから、客観的に見る力がついてきます。

 

 「あのスタッフはいつもすごく感じが良かったんだけど、今回は評価が低いな…」

 「料理を提供する時間がやたらと遅いが、そんなこと今までなかったんだけどな…」

 「盛り付けが雑?…しっかりと教えているはずだが…」

 

 現場を知っているからこそのギャップに、どう対応するのか。ここに経営者の力量がはっきりと表れます。実状は本当に評価どおりのレベルかもしれません。あるいは何か事故があって対応できなかったのかもしれません。はたまた経営者がいる時だけいい顔をしているスタッフもいることでしょう。

 

 出た結果に対して、どう判断し、どう対応するのか。現場を知らなければ調査結果のみで判断してしまい、必ず失敗します。あるいは現場を間違って把握していれば、スタッフを変にかばうことになり、改善は見込めなくなってしまいます。

 

 極論、経営者が現場しっかりと把握し、経営ができているのであれば覆面調査など必要ないのです。現場を知らず、スタッフを信用、信頼していないからこそ外部の覆面調査などに頼らなければならなくなります。

 

 店舗数が増えてくれば、目が届かなくなるのは当然です。そこをどう運営管理していくのかを考え実行するのが経営者の仕事です。目が届かなくなってスタッフのサービスレベルが下がるのは経営者の責任です。それを覆面調査を使って現場を責めるような経営者は、経営者としての資格はないでしょう。

 

 覆面調査の意義はあると思いますが、経営者の皆さんはそれよりも先にすることがあるのではないでしょうか。少し話は逸れますが、これは接客業のロールプレイング大会などにも言えることです。

 

 「覆面調査」と「ロールプレイング大会」の評価と、実際に店舗で売上を作る力は私の経験上、ほとんど相関しません。本当に参考程度にしておかないと、現実を見誤ります。

 

 店舗経営者の皆さん。まずは現場です。最近、いつ店舗に行かれましたか?