ニュースの論点No.75 需要はコントロールできるのか

 

 「USJ入場料、繁閑で差 来年1月から 混雑の平準化狙う」2018928日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「USJはユニバーサルスタジオジャパンのチケットで、混み合う時期に応じて価格を変える仕組みを取り入れると27日に発表した。変動価格制は海外のテーマパークでは一般的だが、日本の大手では初めて。USJでは年間入場者数が4年連続で増加しており、繁閑の差を小さくすることで顧客満足を高める。」としています。

 

 チケット料金の幅は大人で7400円~8700円、子どもで5100円~5900円となっています。春休みシーズンや中国の春節などで込み合うシーズンには高く、冬休み明け10日から末までは安くなるとのこと。チケットの変動価格制は米国のディズニーワールドやユニバーサルオーランドリゾートなどが採用しています。また、東京ディズニーリゾートでも変動価格制を否定しておらず、今後広がる可能性があります。

 

 さて、海外のテーマパークでは一般的と言われる変動価格制ですが、日本ではUSJが初めての試みとなります。ある程度の大型設備を持ち、それを生かして顧客にサービスを提供するというくくりで見ると当然の動きかもしれません。例えばホテル、旅館などの宿泊施設、飛行機、新幹線などの交通機関は繁閑に応じて価格が変動します。経済学の基本でもあるように、需要と供給は価格の高低と密接な関係を持つのです。

 

 一般的に価格が高いと需要は減り、低いと増加します。供給はその逆ですね。要は需要を増やしたければ価格を下げ、減らしたければ価格を上げるのが価格戦略の基本といえます(ちょっと単純すぎますが)。USJはこの基本をそのまま使い、繁閑の差を小さくするという戦略を立てたということになります。

 

 ただし、このUSJの戦略には重要な前提があり、そもそもそのサービスに対して時期の差はあれ、「旺盛な需要」がないと戦略自体が成り立たないということです。タイトルにもあるように、USJは混雑の平準化を狙うこと、つまり需要の調整をおこなうことが目的だと伝えています。いつ行ってもガラガラなテーマパークが変動価格制をおこなっても意味がありません。

 

 価格をあえて上げることができるのは、その供給に対して需要が明らかにオーバーしているときであり、需要がないのにやたらと高い価格設定にすると、経済学の基本通り、さらに需要は減ります。この場合は価格を下げても需要は増えない可能性も高いですが…

 

 一方で非常に人気が高い商品であれば価格が上がっても需要が減少せず、まったく人気のない商品であれば価格が下がっても需要が伸びないということも、実際にはよくあることです。経済学の基本とは裏腹ですが、だからこそ学問だけでは商売は成り立たず、直感や経験も必要になってくるのです。人は「感情」で動き、それは時に不合理な行動となります。ここを深く知り、理解しなければなりません。このことは「経営はアート」たる所以でもありますね。

 

 翻って、店舗は「需要」を直接コントロールすることはできません。供給量、あるいは価格を動かすことしかできないのです。装置産業たるテーマパークは基本的に供給量のコントロールができず、また限りがあります。さらに「コト消費」であるため、価格を変動させ、需要を調整するという戦略がとりやすい業態でもあります。

 

  飲食、小売りなど基本的にモノを売るタイプの店舗では、変動価格制はなかなか難しいと思われますが、まずは価格を変に下げないために、供給量を適正にコントロールすることを心がけましょう。いつでもある、いつでも行けるというモノ、サービスは魅力的ではありません。

 

 努力の積み重ねによって、ブランディングに成功したとしても価格を上げることは難しい半面、売れないからと価格を下げることは簡単にできます。そして簡単におこなう経営者が多いのも事実です。

 

 価格は価値を表すものでもあります。経営者の皆さんも、自社が提供するモノやサービスの価格を安易に下げ、価値を毀損することがないようにしましょう。逆にテーマパークのように価格で需要調整ができるレベルになるよう日々精進してください。