ニュースの論点No.79 時給を上げれば求人応募者は増えるのか

  「お願い面接来て バイト様は神様 ラーメンごちそうします 交通費3000円も出します。」20181029日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「飲食や販売など接客業を中心にパート・アルバイト不足が深刻さを増している。有効求人倍率は8月で1.63倍と44年ぶりの高水準が続く中、最近は募集をかけても応募がない問題が顕在化」としています。

 

 また、同記事では「以前は(人手不足とはいえ)応募はあるにはあったが、今は全く来なくなったという声を企業から聞く」という求人広告会社プレシャスパートナーズの高崎誠司社長の話を載せています。バイトの「応募が来ない」問題は最近さらに深刻になっているのです。

 

 まずは面接に来てもらうために、各社は様々な取り組みを実施しています。家系ラーメン「町田商店」を展開するギフトは、一部店舗のバイト募集で面接に来た人にラーメンをごちそうすることをうたっています。他の販売、飲食業運営会社でも面接に来るだけで3000円や寮完備など新卒採用並みの内容が増えてきているとのことです(同記事)。

 

 私自身も店舗ビジネス(アパレル)の経営をしているから特に実感しますが、今は本当に求人広告を出しても反応がありません。数年前までは少ないながらも応募があり、退職者が出ても対応ができていました。また新規出店の際も何とか人を集めることができていました。

 

 しかし、現在は一人でも退職者が出ると大騒動です。新規出店はしたくてもできない状況であり、勢いのある全国展開のFC店舗(いきなりステーキや串カツ田中など)を除いてはほぼ同様の膠着状態でジレンマに陥っていることと思われます。もっとも、それら人気店でも人を集めるのは大変だと思いますが…

 

 もちろん全国展開をしていない各地方の店舗でも相当の人気があり、“今は”求人に困らない会社もあるでしょう。しかしかなりの少数派で、そのライフサイクルも年々短くなっていることを強く感じます。これまで本当に色々な店舗の栄枯盛衰を見てきましたが、消費され、飽きられるスピードが早くなっていると痛感します。

 

 これは前述のいきなりステーキや串カツ田中など、勢いあるFCチェーンにも言えることで、むしろ一度流行ってしまうと、上り調子の時と同じ角度で落ちていくことが多く、伸びているときが一番注意をしなければならない時期だといえるでしょう。“今は”良いのですが…

 

 さて、話を戻しますと、店舗ビジネスの現状では、記事にもあるようにまずは面接に来てもらわなければ何も始まりません。ですので本記事のように面接に人を集めるために、様々な手を打つことを否定はしませんが、どうも今回の内容を見るとモノやカネをエサにして釣るような感じがしてなりません。

 

 そうやって入社したアルバイトは果たして思うような仕事をしてくれるのか…今はそういう時代ではないことは重々承知していますが、なんとも違和感というか、拭い去れない気持ちの悪さを感じます。

 

 東京都では最低時給が985円となり、実質的には1000円をこえます。他の地域でもどんどん上がっていることでしょう。店舗間の競争によりそれがさらに加速しています。待遇面で競合他社より少しでも良くすることには何の問題もなく、働くスタッフのためにもなりますので積極的にやってほしいと思います。しかし今回の内容を見る限り、何か違うところでの競争となっているような気がします。

 

 誤解を恐れずに言えば、本記事の求人施策は、店舗でのお客様に対する安売り競争やまったく必要のないノベルティプレゼントなどを想像してしまい、そこじゃないだろう、と経営の軸のなさを感じてしまうのです。表面的な部分だけの訴求では結局そういう人材しか集まりません。採用しても長続きしないでしょう。「外部からは表面だけしか見えないからしょうがないだろう!」という意見もあるでしょう。

 

 しかし、人はその見えない部分を敏感に感じ取ります。経営者のこうしたい!という「熱い想い」は特に重要で、店舗にはそれが充満しているのです。もちろんその想いは求人媒体に載せる文面にも必ず現れます。精神論的で申し訳ないのですが、実際にお客様もスタッフも同じ人間であり、人が集まる店舗には経営者の「熱い想い」は必ずあります。

 

 給与の額や福利厚生、今回のような面接対策なども重要なことではあります。低いよりはもちろん高いほうが良いし、充実した福利厚生があったほうがよいでしょう。しかし、最も重要なことは果たしてそこなのでしょうか。

 

 さて、店舗経営者の皆さん、自身の「熱い想い」を伝える努力をしていますか?

 そもそも、「熱い想い」を持って仕事に取り組んでいますか?