ニュースの論点No.86 キャッシュレス社会は良い?悪い?

 

 「ペイペイで不正請求被害 スマホ決済、流出カード情報悪用か」20181218日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「ヤフーとソフトバンクが出資するスマートフォン決済会社のペイペイは17日、スマホの決済サービスで、不正な利用があったことを明らかにした。同社はセキュリティー対策を強化し、被害の拡大を防ぐとしている。」

 

 「ペイペイは124日から13日まで総額100億円を還元する大規模なキャンペーンを実施。支払った額の2割を還元する内容だが、キャンペーン時にクレジットカード情報を不正に取得し、利用されたとみられる。」としています。

 

 本件ではペイペイに登録していない人にも請求が届いており、闇サイト上の流出したカード情報が使われている可能性があります。ペイペイに登録する際、クレジットカードのセキュリティーコードを何回間違えても入力でき、ロックがかからなかったことが被害を広げた一因ともみられています。ペイペイ側はこのセキュリティーの不備に対し、すでに安全性を高める措置を施したとしています。

 

 さて、巻き込まれた被害者からすると何のプラスもない散々なトラブルとなった今回のキャンペーンですが、利用者にとってみれば2割の還元、すなわち20%OFFと同様の価値がある素晴らしいキャンペーンとなったことでしょう(ポイント還元ではありますが)。ちなみに現在使える店は、基本的に大手の家電量販店、コンビニ、飲食店などが名を連ねています。

 

 本キャンペーンでは還元上限額が1か月あたり5万円(支払額25万円)とのことで、比較的高額な商品を購入する利用者が多かったようです。実際に10日間という短期間で終了しており、期間中の登録者数は190万人、100億円の還元に対して500億円が使われていることになります。一人当たり26315円の使用金額、5263円のポイント還元となります。

 

 還元ポイント目当てだとはいえ、190万人の登録者数を獲得し、使用された金額もなかなかの規模です。これが定着すれば、政府が目指す「2025年までにキャッシュレス決済40%」にも多少貢献するのではないでしょうか。

 

 今回、キャンペーンを仕掛けたペイペイ側からすれば、群雄割拠のスマホ決済市場を一気に獲りにいくための一手だといえます。競合のLINEpayは早速12月14日から12月31日まで20%還元を実施し、ペイペイを追随しています。

 

ここで視点を変えて、そもそもスマホ決済にはどういったものがあるかご存知でしょうか。

 

 スマホ決済の定義はそれぞれありますが、基本的には「スマートフォンを経由して決済する方法」となります。スマホ決済は大きく分けてFerica(非接触型ICチップ)方式とQRコード方式の二つの方法があります(細かくは省きます)。

 

 Ferica方式はSuicaやEdy、nanaco、WAONなどの電子マネーカードにも組み込まれている技術で、スマホにも同様のチップが組み込まれています。特徴としてはスマホをかざすだけで簡単に決済ができることです。AndroidスマホのおサイフケータイはFericaが搭載されています。iPhoneにもようやく7からFericaが搭載されたことは記憶に新しいと思います。

 

 QRコード方式はICチップが搭載されていなくてもスマホ決済ができる仕組みです。スマホに専用アプリをダウンロードし、画面に表示させたQRコードをレジで読み取ってもらうか、店側が提示するQRコードをスマホでスキャンすることで決済できます。

 

 お金はどうつながっているのでしょうか。Ferica方式、QRコード方式ともにクレジットカードと紐づけたポストペイ(後払い)形式と事前にチャージするプリペイド(前払い)形式があります。

 

 当たり前のことを言うようですが、スマホ決済に紐づくクレジットカードやプリペイドは、それ自体がキャッシュレス決済であり、スマホ決済はさらにそれを一歩進めて簡略化し、手間を省き、利便性を高めて、店側、客側双方の、より多くの人が使えるようにしたものです(決済システムを提供する会社は“データ”を収集し、そこから付加価値を生み出します)。

 

 現在、競争が過熱しているのがQRコード方式で、先述のペイペイ、LINEpayをはじめ、楽天ペイ、Origamipay、d払い…、さらに中国系ではAlipay、WeChatpay…とかなり多く、さらに新規参入も相次いでいます。

 

 今回取り上げた記事は過熱するスマホ決済市場のスタンダードを狙う競争の中、100億円還元キャンペーンというイレギュラーなお金の流れを狙って起きたものだといえるでしょう。

 

 さてここまでスマホ決済の大枠を眺めてきました。その知識も大事ですが、私が言いたいのは、店舗経営者が考えるべきは、その仕組みをどう活用するのかということです。今、新たな決済の仕組みを導入しないのは自ら戦線離脱を宣言するようなものです。

 

 新しいものが何でもよいとは限りません。しかし、技術の進歩による利便性の向上は誰にも止められるものではなく、元にも戻らないのです。決済方法に関しては、誰でも簡単、確実、安全、便利なほうがいいに決まっています。そうであれば、我々が導入しない手はないのです。

 

 何にでも言えることですが、新たな仕組みに対してお客様は意外とすぐに慣れます。公共の交通機関で現金を使う人はほとんど見なくなりました。ネット通販では現金のやり取りはほぼ発生しません。実店舗でもかならずこの波が来るのです。不正利用が怖い…と言っている場合ではないでしょう。キャッシュレスの流れは善でも悪でもなく、単なる進化なのです。

 

 店舗経営者の皆さん。波に乗り遅れることのないよう、常にアンテナを張っておきましょう。そして新たなことにチャレンジしてください。