ニュースの論点No.87 ルールは必ず変わる

 「年中ノーネクタイ広がる…クールビズの影響か」20181225日、産経新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「クールビズの初夏から初秋の期間だけではなく、1年中、ノーネクタイで通すサラリーマンらの姿が目立つようになった。」「着用していないサラリーマンらに聞くと、「ほとんどつけない」や「顧客や外部の人に会う時以外は着用しない」などという声が8割超を占めた。」「ネクタイの国内生産はクールビズ前と比べ3分の1以下、家庭の支出は6割減にまで落ち込んだ。」としています。

 

 クールビズは環境省の旗振りで平成17年に始まりました。ノーネクタイ、ノー上着といった格好が比較的すぐに広がり、現在では官民問わず違和感なく定着しています。当初こそ単にネクタイを外すだけ、といった人も多かったのですが、最近ではシャツ、ポロシャツともに様々なデザインが出回り、誰でもこなれた感じのビジネスウェアとしてクールビズを表現できるようになっています。

 

 クールビズ期間は5月から9月とされていますが、一部の公的機関以外、意識している人はほとんどいないのではないでしょうか。とすれば記事にもあるように徐々にその前後に広がっていき、ネクタイの必要性が薄れていくのは避けられない運命といえるでしょう。ネクタイ業界が壊滅的な状況であることは容易に想像できます。

 

 さて、この記事を表面上だけで見ては何の学びも得られません。どんな業界でも「明日は我が身」です。深く洞察することが自身の将来を左右する知恵となります。

 

 そこでまずは皆さんの業界では当たり前になっていることを疑ってかかる必要があります。仕事ではスーツにネクタイが当然だ。ネクタイを付けないと相手にとって失礼だ。ビジネスや冠婚葬祭需要でネクタイ業界は安泰だ…と思って何の疑いもなくネクタイ業界で働いていたら、市場自体の大規模な縮小で大ピンチに陥ります。これはあなたの業界でも同じなのです。

 

 クールビズがなかったら…などと甘いことを言っても無駄です。そもそもそれ以前からネクタイ市場は縮小しており、国内生産量は平成9年の3029万本からクールビズ開始前の平成16年には1280万本となっています(現在は398万本)。あなたの業界でこんな変化は見られませんか?

 

 業界を変えてみれば、現在ホテル、旅館などの宿泊業界やタクシー業界は規制により守られていますが、今後は明らかにエアビーやウーバーなどの新興企業に侵食されていくでしょう(規制されていても流れを止めることはできません)。

 

 あらゆる情報が可視化、加速化する現在では、時代の流れを読むことは経営者にとって必須の能力です。旧態依然としたルールや規制は一気に変化を求められます。何もせず口をぽかんと開けたままであれば、今まで築き上げたものは容赦なくすべて残らず消え去ります。

 

 世の中に変わらないものは一つとしてありません。今は調子のいい業界だとしても、いつまでも続くはずがないのです。そこでしなければならないのは、「ネクタイの新しい使い方のアピール」や「冠婚葬祭業界への売り込み」などではなく、一歩離れて俯瞰し、自社の事業を再定義することです。外に出て時代の流れを知り、ネクタイという具体的なモノから離れ、今、自社が提供できる価値は何か?を理解することなのです。

 

 ネクタイ業界の方は本当に大変だと思いますが、ピンチはチャンスでもあります。このまま指を咥えて見ているのか、それとも変化していくのか。これは誰からも強制されず、自身で決めることができます。

 

 店舗経営者の皆さん。今年も終わりに近づき、1年の節目を迎えます。いい機会ですので、自分のことと置き換えて考える時間を作ってみてはいかがでしょうか。