ニュースの論点No.90 新陳代謝は自分から

 

 「オンワード社長 ZOZOと根本の考え違う 出品停止」2019111日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「アパレル大手のオンワードホールディングスの保元道宣社長は11日、衣料品通販サイトゾゾタウンへの衣料品の出品を取りやめたことについて、『定価で売る努力をすべきで根本の考えが折り合わなかった』と述べた。」

 

 「サイトを運営するZOZO201812月末に始めた定額会員サービスで、常時割引で商品を出品するように求めたことで、出品を続ければブランド価値が低下すると判断した。」としています。

 

 ゾゾは1225日よりZOZOARIGATOという新サービスを開始。年間3000円と月々500円のプランを用意し、入会すると常時10OFF(新入会員は初月のみ全品30OFF)の特典が付きます。割引分はゾゾが負担しますが、取引先に対し、新サービスに参加するか商品供給を止めるかという強気の姿勢で条件を提示しているとのことです。

 

 記事では、保元社長はゾゾからの事前の相談もその時間もほとんどなかったと指摘しており、「在庫が残れば値引きするが、新商品投入の初日から値引きすると安ければ安いほどいいということになる。」と伝えています。

 

 オンワード社長の主張に賛同できる部分はありますが、そもそもオンワードとゾゾの客層とは相性が良くなかったのでしょう。また、常時割引でブランド価値が低下するということには異論がない半面、オンワードの各ブランドについてもセールは様々な名目で以前から行われていますので、ブランド価値というところでは果たして顧客にどれだけ評価されているのか…  近年の業績を見ても良い評価とは言い難いでしょう(この3年は売上が減少傾向。20182月期は2430億円。営業利益51億円)。

 

 さて一方のゾゾですが、業績はこの10年来伸長し継続成長しています。東証マザーズに上場した073月期は売上が60億円でしたが、183月は984億円でなんと16倍!営業利益も326億円(営業利益率33%)と好業績をマークしています。

 

 ゾゾはサイト自体の完成度もさることながら、それを常に改善し、さらに新たなサービスをどんどん市場に投入しているところが強みの一つです。最近ではアプリで採寸ができるゾゾスーツは記憶に新しいですね。また、PBやオーダースーツを始めたり、ツケ払い、ZOZOUSED(古着流通)、WEAR(コーディネートアプリ)など、ゾゾ経済圏ともいえる顧客包囲網を構築しています。失敗したサービスも多々あるようですが、ここまでいけば誰の目からも順風満帆としか言いようがないでしょう。

 

 そして今回のZOZOARIGATO。このサービスが継続するかどうかはわかりませんが、その目的の一つは新規顧客獲得とみて間違いないでしょう。3000円の年会費であれば、1年間で3万円以上の買い物で元は取れます。しかも新規入会者(ゾゾ自体)は初月30OFFです。1万円で元が取れます。ただし、入会者にとって3万や1万の使用金額だと元が取れるだけで何の得もしないため、必ずそれ以上の購買金額になるでしょう。

 

 このことから、ZOZOARIGATOに入会する人は、もともとゾゾで継続して年間3万以上の買い物をしていたアクティブユーザーか、高額商品のニーズがある新規客が大半を占めるでしょう。新規客の中には、30OFFで購入した商品をフリマアプリで転売する不届き者も必ずや出てくるでしょう(そのため、ゾゾは1ヶ月の上限を50000円に設定していますが)。

 

 ちなみにゾゾでは過去1年以内に1回以上購入したユーザーはアクティブ会員と呼ばれ、その数511万人(それ以外はゲスト購入者で211万人)。年間購入金額は47,661円となっています。仮にアクティブ会員全員がZOZOARIGATOに入会すると、30OFFは発生しませんが、単純に10OFF4766円となり、ゾゾの正味の一人当たり負担額は入会金3000円を引いた1766円となります。ということは総額1766×511万人で約90億円。なかなかの金額ですが、新規入会者やアクティブ会員の客単価向上を考えれば、長い目で見るとプラスになると踏んでいるのでしょう(そもそもアクティブ会員全員が入会することはないと思いますが)。

 

 他方、このサービスの特徴は、割引した10%を自分用の割引か、購入先のショップへの応援か、ゾゾが指定する団体への寄付が選べることです。ユーザーにはぜひ社会貢献をしてほしいですが、果たしてどうなるのでしょうか。ゾゾの前澤社長は実験的なことがお好きなイメージです。これからも興味深く見守っていきたいと思います。