ニュースの論点No.91 北風と太陽

 

 「『個人データ渡さない』4割 ネット良い影響 若年層4割 60代以上は16%」2019121日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば、「企業に個人情報を提供したくないという人が4割に及ぶことが、日本経済新聞社の郵送世論調査でわかった。60歳代など中高年層の抵抗感が強い。」としています。

 

 また、「米グーグルやフェイスブックなどは無料でネットのサービスを提供する代わりに個人情報を集めている。今回、個人情報を企業に提供する際に重視する点を尋ねると「どんな企業にも、なるべく提供したくない」が40%だった。世代別では60歳代が53%で最も高く、1820歳代は24%でその半数以下だった。」ということです。

 

 これはアンケートをするまでもなく想定できる結果です。私の周囲でも、60歳代以上の方々は一部の方を除き同様の意見を持っており、ネットに対する不安や、そもそも使い方がわからないといった理由で、SNSをはじめ通販サイトの利用もしていないパターンがほとんどです。

 

 まず壁となるのが、自分自身のディープな個人情報はもとより、クレジットカードやキャッシュカードの情報、行政に関わる情報や交友関係など、「ネット上で登録するなんて、すぐに情報が漏れそうで怖い」という不安です。

 

 その次の壁となるのが、「登録の仕方がわからない」です。これは私も思うことですが、登録までに時間がかかるサービスが非常に多いと感じます。もっと簡単に登録できればいいのに…と思ったことが何百回もあります(あきらめたことも相当…)。

 

 ようやく苦労して登録しても、その次の壁「使い方がわからない」が待ち受けています。慣れればなんてことはないものがほとんどですが、大半の人は慣れるまでに諦めます。

 

 そして最後に「私には向いていない」がきます。さらに「なくても困らない」となり、今まで通りの生活に戻ります。基本的に人は誰でも現状を変えたくないバイアスが働き、シニア層は特に何十年と自身の生活スタイルを積み上げてきています。どんなに便利でもその壁をぶち破るには相当のパワーが必要です。

 

 にもかかわらず、不安感を払しょくせず、登録方法、使い方などが分かりにくいサービスを提供するのは問題です。これは店舗ビジネスにも当然言えるわけで、利用者がいかに簡単に取り入れることができるかという視点は非常に重要です。

 

 店舗でアプリを開発、導入する際も、若年層だけではなく、60歳代以上の利用者を想定しておくべきです。必要以上の個人情報を入力させず、簡単に登録でき、誰にとってもわかりやすい操作性であることは必須条件です。でなければ若年層も登録してくれません。

 

 今回のアンケートでは、当たり前といえば当たり前の結果が出ていますが、日ごろ感じていたことが裏付けられたとも言えます。日本ではこれからさらに高齢者は増えていきます。そこに焦点を当てない手はありません。

 

 これはネットに限らず、実店舗でもいえることです。パッと見てわかりにくい店は誰でも入りにくいものです。シニア層に警戒されず、わかりやすいサービスを心がけましょう。年齢層を問わずいえることですが、店舗のサービスに満足し、お得意様になっていただければ、こちらがお願いしなくても、まさに「北風と太陽」のごとく個人情報は勝手にお客様のほうから教えてくれるようになるのです。