ニュースの論点No.93 食品ロスを生むコンビニ会計

 「消費期限間近なら半額 HIS×ポプラ アプリで通知、食品ロス削減狙う」201924日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば「HISグループがコンビニエンスストアなどと組み、消費期限切れなどで食品が廃棄される「食品ロス」の削減に取り組む。まずポプラと組み、1日からスマートフォンアプリで消費期限の近い食品の割引情報を消費者に通知するサービスを始めた。」

 

 「HISグループのTODOKISUGI(トドキスギ)がアプリ「No Food Loss」(ノーフードロス)の開発や運営を担う。トドキスギの沖杉大地社長はHISの元社員。食糧問題に関心があり、起業した」ということです。

 

 サービスの具体的な流れは、まず店舗のオーナーが消費期限の近い商品をアプリ上で検索し、クーポンの発行枚数や値引き額などを登録します。その情報が店舗近くにいるユーザーや店舗登録したユーザーに届き、欲しい商品があればユーザーが店舗に出向き、アプリをQRコードにかざしてクーポンの認証を行います。認証済みのクーポンを店員に見せると割引商品が受け取れるということです。

 

 コンビニエンスストアでは珍しい取り組みであると同時に、昨今問題となっている食品ロスの一つの解決策としても非常に有意義な施策だと感じます。

 

 そもそもコンビニ業界はフランチャイズ契約において、主に粗利分配方式がとられています。これは売上から原価(仕入)を引いた粗利益を本部と加盟店とで分配する契約となっているのですが、加盟店からすると到底納得のいかない会計方法(いわゆるコンビニ会計)となっています。

 

 一言で言えば、原価に廃棄分が計上されず、その分が水増しされた利益を双方で分配する方式となります(本部が37割程度持っていきます)。何が問題かというと、通常は店舗において廃棄分は原価計上し、その分利益は目減りします(当たり前ですね)。そうして計上した利益を分配するならいいのですが、コンビニ会計だと廃棄分はすべて加盟店が負担(契約によっては一定額〈数十万以上〉を超えると本部1550%負担してくれることもあります)し、なおかつ廃棄分が原価計上できないために、本来は粗利が出ていなかったとしても本部へロイヤリティを負担しなければならないということです。

 

 売価100円のおにぎりを原価70円で10個仕入れ、7個売れ、3個廃棄した場合を考えます。

 

【通常】

売上100×7=700

原価70×10=700

◇粗利益700-700=0

 

【コンビニ会計】

売上100×7=700

原価70×7=490

◇粗利益700-490=210

廃棄損70×3=210(販売費)

営業利益210-210=0

 

 通常の場合は粗利益が0で加盟店が支払うロイヤリティも0となりますが、コンビニ会計だと同じ売り上げでも粗利が210円となり、本部に支払うロイヤリティが発生します。加盟店にはその分余計に費用がかかるということです。要は1個でも売れれば必ず本部が儲かる会計方法なのです。

 

 経常的な廃棄であれば、仕入れとして計上するのが妥当でしょうし、消費期限が1日程度の商品は原価としてみるほうが良いでしょう。それが契約上、廃棄損(販売費)としてしか計上できないということが問題なのです。

 

さて、ここで値下げした販売した場合を考えてみましょう。

 

 上記の例で、残った3個を売価の半額50円で販売した場合

 

【通常】

売上100×7=700

   50×3=150

  700+150=850

原価70×10=700

◇粗利益850-700=150

 

【コンビニ会計】

売上100×7=700

   50×3=150

  700+150=850

原価70×10=700

◇粗利益850-700=150

 

 当然のことながら、両者とも粗利は同額になりますが、ここで重要なのは、値下げ販売するとコンビニ会計での粗利が減るということです(加盟店は何とか利益が出せました)。これは本部の儲けであるロイヤリティが減ることを意味します。

 

 このことから、本部には加盟店に値下げ販売をさせたがらず、かつ多めの仕入れをさせるというインセンティブが働きます。この点、ポプラは一般的なコンビニチェーンと違い、契約が売上歩合方式(売上の3%)となっています。これは他社に比べ加盟店に有利(粗利分配方式で粗利率が30%、ロイヤリティが50%だとすると、売上歩合に換算すれば15%となる)であり、本記事の取り組みである消費期限間近なら半額という施策は、この会計方式の違いも大きく影響しているでしょう。

 

 ともあれ、コンビニをはじめ他業界でも食品ロスの問題はすでに看過できない状況です。会計方式に関わらず、早期に着手するべき課題だといえます。最近で言えば、恵方巻の廃棄も大きな問題となっています。業績を上げることも非常に大事なことですが、継続可能な事業展開をしていかなければ、顧客からいつそっぽを向かれてもおかしくない時代になりつつあるのです。