
「売らない店舗 オンワード出店 注文はネット 在庫圧縮」2020年10月21日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「業績悪化に苦しむアパレル各社が事業モデルの転換に挑んでいる。オンワードホールディングスは2020年度中に試着のみの実店舗を新設する。」「店名は自社の通販サイトと同じオンワードクローゼットとし、23区など複数の主力ブランドを扱う」としています。
モノを売らない店でいえば、アパレルメーカーではありませんが、マルイが先行しています。マルイはモノを仕入れて販売する百貨店型から、飲食店などのテナントの賃料収入をベースとする不動産型、ショッピングセンター型に移行し、さらに実店舗をショールーム機能に特化させ、それらの店舗で構成する「デジタル・ネイティブ・ストア」を実現させるべく動きを進めています。
近年、アパレル業界は斜陽産業となりつつありましたが、コロナ禍によってさらにその動きが加速しています。特に百貨店とそれに付随する百貨店ブランドは頼みの綱であるシニアや外国人の需要がシュリンクし、百貨店は閉店、ブランドは休止、店舗は閉鎖と負の循環がとどまることを知りません。
そんな中で百貨店ブランドの代表格であるオンワードが、将来につなげる一手として本記事の通り「売らない店舗」、つまり試着のみの実店舗を新設する運びとなっているのです。
現在はまさにアパレル業界、ひいては百貨店をはじめとした小売業界の大変革の過渡期にあります。ここで何も挑戦しなければすぐに退場となるでしょうし、一方で新たな取り組みの中では当然失敗の数も増え、ヒトモノカネ情報といった経営資源に余裕がない企業は一度の失敗が死活問題となります。
さて、ここで気になるのが実店舗で働く販売員の存在です。「そもそもいらないのではないか」「買い物の邪魔」「愛想がないし知識もない」…などといった痛烈な批判も目にします。一方で優れた販売員がいる店舗は、明らかに他の店舗より売上が頭一つ抜きんでています。これは販売員に限らず、どんなモノやサービスを提供する店舗でも同様です。
店舗で試着してネットで買う。一見効率的で無駄の少ない仕組みではありますが、そこに介在する販売員(係員?)の仕事はどうなるのか。試着だけだったら無人でもいいわけで、人を置くとすればどこまで、どんな役割を担ってもらうのか。店舗で働く人の評価はどうするのか。単なる作業員的仕事であれば、働く魅力は薄まり、成り手は非常に少なくなるでしょう。
多くのお客様は店舗にコミュニケーションを求めてこられます。また、ショッピングバッグに入れて持って帰ることも買い物の魅力の一つです。それ以外にも店舗での買い物は一見非効率な中に魅力が隠されています。今後全ての店舗が試着型店舗になるとは思えませんが、メーカー側の効率だけで考えると、誰も望まない無味乾燥な店舗となってしまう恐れがあります。顧客側の視点を漏らさず取り入れ、店舗としての魅力を最大限出せる「実店舗」へと変革するべく、私たちも努力していきましょう。

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