
「ニトリHD 外食参入 主力は500円チキン 家具店に併設」2021年5月12日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。記事によれば「ニトリホールディングスは外食事業に参入した。卸を通さずに食材を調達し、店舗では自社の家具や食器を使うなどして運営コストを下げる。将来は家具と同様に生産から販売までの一貫体制を目指す。」とのこと。
店名は「ニトリダイニング みんなのグリル」で、主力メニューは500円のチキンステーキです。その他のメニューはチキングラタン500円、ハンバーグステーキ700円、リブステーキ990円と比較的低価格なラインナップとなっています。
同店HPのコピーを確認すると、「ご家族でも、おひとり様でも、気軽に楽しめる美味しさを。お子様からご年配の方、お一人様まで幅広い方々に気軽に足を運んでいただける…以下略」とのことで、ターゲットとしては老若男女問わず全方位型でいくようです。現時点では東京都足立区、神奈川県相模原市のニトリ敷地内に2店舗を構えています。最初はニトリのお客様から認知してもらい、徐々に拡大していく考えなのでしょう。
将来的には畜産にも事業領域を広げ、本業である家具の製造小売りで培ったノウハウを応用することで、外食事業においても販売価格を下げ、競合との差別化につなげていく戦略を取るようです。加えて、家具や食器の調達はもとより、内装工事も自前で行い、立地は自店の敷地内で賃料も相当抑えることができます。集客面でも先述のようにニトリから半分自動的にお客様を流すことができ、当初は広告費もそうかける必要はないでしょう。
すべては戦略的に狙ってやっており、かなり手堅く事業化を進めている印象です。ニトリで買い物をするお客様が好きそうなメニュー、価格帯で、継続的にしかも横展開ができそうな食材や業態で、まさに抜かりがない感じがします。
近年、郊外型紳士服チェーンが自店の敷地内に焼き肉など飲食店のFCを展開していますが、それとは状況が似て非なるものです。郊外型紳士服チェーン業界は1994年がピーク(6570億円)で、2018年は4478億円と厳しい状況が続いています。紳士服チェーンは現状を打破する対策として他業種参入という打ち手を取った一方で、ニトリは2021年2月期まで34期連続で最高益更新と業績が好調な中での新規参入です。
この差は大きいと私は思います(おそらく誰でも)。ある程度戦略的自由度(選択肢)がある中での新規事業展開であり、しかもヒトモノカネといった経営資源も豊富で、かつ他社への依存度も少ない。
好調な時は「好事魔多し」で気を付けるべき時期ではあります。しかし一方で、攻めの姿勢で新たな事業を興すことも当然ながら必要です(既存事業がいつまで続くかわかりません)。この点、ニトリは34期連続最高益更新でも守りに入らず、手堅く新規事業を進めており、経営に関して隙がないように見えます。
コロナの影響による巣ごもり需要もニトリ好調の後押しとなりましたが、そもそもその前から好調です。これまでの業績を見る限り、今後も好業績を継続する可能性が高いでしょう。まさに順風満帆といった様相を呈していますが、それでも何が起こるかわからないのが企業経営です。ニトリの今後の動きに注目していきたいと思います。

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