ニュースの論点No.220 潔さは悲惨さを伴う

 「酒提供店との取引停止 酒販業者への依頼撤回」2021713日、日本経済新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「政府は13日、酒の提供を続ける飲食店との取引停止を酒類販売事業者に呼びかけた依頼を撤回した」としています。

 

 政府は今月8日、飲食店を対象にした新型コロナウイルス対策を強化するため、酒類販売事業者に対し、政府の要請に応じず酒類を提供する飲食店との取引を停止するように要請することを明らかにしていました。

 

 上記に合わせ、要請を拒否する飲食店の情報を取引金融機関に流し、順守するように働きかけを求める方針も検討されていましたが、こちらの案はわずか1日で撤回されるという事態となっていました。

 

 まさに迷走という言葉がぴったりの事案です。しかも一連の迷走は単なる西村経済再生担当相の「失言」ではなく、内閣官房側が銀行などを監督する金融庁や、政府系金融機関を所管する財務省、経済産業省と事前調整していたことも明らかとなりました。

 

 いずれにしても、なかなかの悪手の上に、悪い意味での朝令暮改でその政治哲学のなさがはっきりと表れました。そもそも経済再生担当相が経済を破壊するような施策を打ち出すのは、本末転倒も甚だしいと思います。

 

 すべてはオリンピックのため、と言われても反論のしようがないくらい誰から見ても明らかにオリンピック重視の動きです。私は怒りを通り越してもはや悟りの境地を切り開いた感覚です。飲食店の皆さんにとっては死活問題ど真ん中ですから、営業時間や酒類提供自粛の要請には多くの店が「付き合っていられない」となるでしょう。

 

 とはいえ、自暴自棄になっても何もいいことはありません。飲食店経営者の方々にはこんな時こそ冷静に対応してほしいと思います。愚策でもルールはルールで、現状の緊急事態宣言も納得はいかなくても一応は守るべきルールです。「正直者が馬鹿を見る」事態になることは避けなければなりませんが、馬鹿なルールだから守らなくてもいいとなると最終的には無法地帯になって誰にもいいことはないでしょう。

 

 コロナ禍への対応に正解はありません。ただひとつだけ明確なのは、指をくわえてなにもせずにいると、真っ先に退場になるということです。自分には何ができるのか、何をすればいいのか、これまでの延長線上ではない発想が必要です。

 

 コロナ収束がいつになるかもわからない中、茫然自失になっている経営者もいらっしゃると思います。売上が戻らないからと、訳も分からず安易な転職や事業転換に走る経営者もいらっしゃるでしょう。しかしながら、「潔さは悲惨さを伴う」の言葉通り、潔く変えてしまうと失敗する例も実は少なくありません。皆失敗したことを言わないだけです。

 

 まずは冷静になるために、自分を客観視する壁打ちの壁役(対話する相手)を見つけましょう。危機時は視野が狭くなります。そんな時こそ自分の可能性を俯瞰することが必要です。お金をかけたくない場合は、公的機関の無料相談を利用してみてもいいでしょう。いずれにしても、対話相手はプロを選んだ方がいいと私は思います。

 

 重要なのは、アドバイスをもらうのではなく、現状を整理するための対話をすることです(プロでもろくに話を聴かず、的外れなアドバイスをする人がいるので注意)。現状整理すると、自分自身の思考が整理されます。これだけで解決策が見つかる場合も多く、やってみる価値はあります。ぜひ壁打ちの壁役を見つけ、対話をしてみてください。自分の意外な盲点に気づき、やるべきことが明確になります。

 

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