ニュースの論点No.275 最低賃金アップは焼け石に水?

 「最低賃金引き上げ額、過去最大の31円 平均961円に 中央審決定」202281日、毎日新聞はこう題した記事を掲載しました。記事によれば「今年度の最低賃金(時給)について、労使の代表者らが協議する中央最低賃金審議会は1日、引き上げ額の目安を31円(3.3%)と決めた。」としています。

 

 この目安どおりに上がれば、「最高は東京都の1072円、最低は沖縄、高知両県の850円となる」とのこと。過去最大の引き上げ額で、円安やウクライナ危機による物価高騰が影響を与えています。

 

 ちなみに今から30年前、1992年の最低賃金は565円でした。最低賃金はこの30年で約400円、70%ほど上がっています。

 

 ちょっと視点を変えて平均年収を見てみましょう。1992年は455万、2020年で433万となっています。平均年収はこの30年で20万程下がっていますが、推移としては1997年の467万をピークに、2009年の405万が底で、現在まで波をつくりながら少しずつ上昇して433万になっています(正規、非正規含む)。

 

 最低賃金は政策により半ば強制的に決定されるもので、基本的に下がることはなく上げ続けられます。一方の平均年収は各企業の経営状況が積み上げられたもので、景気やその他の外部環境の影響を受けた結果として表れます。

 

 最低賃金は30年で70%増加し、平均年収は同期間で5%減少。大雑把な結論を言えば、最低賃金の調整は全体の収入を上げるには全くの無力であることがわかります。

 

 もちろん、細かい話をすれば、アルバイト・パート等非正規の方の時給は確実に上がっていくわけですから、現場で働く側にとってはプラスになります。ただ、最低賃金が上がれば、多くの企業はコスト削減のため給与総額で調整します。つまり、一人当たりの労働時間を短くするか人員を減らす。結果、一人あたりの収入は変わらないかむしろ下がる。当然、平均年収も下がります。

 

 一方の正規社員はほぼ月給制ですが、最低賃金961円で大まかに計算すれば、月収は961円×170時間=163,370円となり、最低賃金が多少上がっても総額にはほとんど影響しません。

 

 なぜ企業は給与を上げないのか。あっさり言えば、払いたくても払えない。要はそれほど儲かっていないのです。企業の約7割は赤字と言われる中、もともと人件費に割く余力はありません。日本は従業員一人一人が生む付加価値(労働生産性)が主要7か国では最も低く、各企業の儲けるための仕組み(あるいは一人一人の働き方)にも問題があります。

 

 経営者には当然経営責任がありますが、社員一人一人にも克服すべき課題はあります。「頑張っても給料が上がらない」のは企業の問題でもある一方、その企業を選び、不満を言いながらも漫然と働き続ける側にも責任の一端があると私は考えます。

 

 経営者、社員、アルバイトやパートなど、社内の全員が付加価値を上げるために行動していきましょう。まずは必要以上の安売りは止め、正しく価値を伝える努力を怠らないようにしてください。その積み重ねが各自の収入をアップさせる一番の道です。

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