ニュースの論点No.289 なぜその価格?

 「値上げラッシュでも『価格維持』のシャトレーゼ クリスマス商戦の秘策は『フォルムチェンジ』にあり」2022117日、ITmediaビジネスONLINEはこう題した記事を掲載しました。記事によれば「最大の書き入れ時であるクリスマス商戦も、価格を維持して臨む構えだ。背景には2つの戦略が潜んでいる」としています。

 

 シャトレーゼの価格を支える2つの戦略は、主要な素材を自社で調達し、製造から配送まで行いコストを徹底削減する「ファームファクトリー」モデルと、社員の意見を吸い上げ、改善を図る「改善提案制度」があります。

 

 タイトルにもある「フォルムチェンジ」もその中から出た改善策で、これまで長方形だったケーキを円形にすることでロスを減らすことが可能になったとのこと。しかしその一方で、微妙に量は減らしつつ価格はそのままの「ステルス値上げ」との声も上がっています。

 

 さて、食材の価格が高騰し、業界では値上げラッシュが続いている中、価格維持のアナウンスは強い宣伝効果が見込めます。たとえ利益率が下がっても、「価格維持マーケティング」による販売数量拡大で利益のマイナス分をカバーする戦略なのかもしれません。

 

 もともと安価な商品を提供する企業において、「値上げ」の影響は相当大きくなります。安さを追求する消費者は少額でも値上げ幅を大きく感じ、通常よりも負担感が増大するのです。この点、単純な値上げではなく「ステルス値上げ」や「仕様変更」などの「見えざる戦略」が誘発されやすくなります。

 

 しかし、値上げによる売上減少を恐れるあまり顧客を欺くような方法を取るようでは、これまでの信頼関係が破綻してしまう恐れがあります。個人的には、ステルス値上げのような小賢しい方法を取るのではなく、値上げは堂々と行い、顧客にもその理由を漏れなく情報提供するべきだと思います。

 

 実施している「企業努力」が誰かの犠牲のもとでしか成り立たないのであれば、絶対に長続きはしないばかりか、将来にわたって深い傷を残し、企業生命を削る可能性があります。

 

 世の中には「不健全な安さ」の商品が少なくありません。それらの商品は大半の場合、関わる人や資源の浪費、それに伴う環境破壊など、多くの犠牲の上で成り立っています。消費者側も「安さ」だけを求めるのではなく、価格の理由を知り、日常の消費に責任を持つ必要があると感じます。

 

 経営者の皆さん。自社の商品・サービスにおける「価格の理由」を顧客に説明できますか?値上げ、値下げの理由を公開しているでしょうか。顧客との信頼関係をつくるには、長期に渡る「地道な行動の積み重ね」しかありません。

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