ニュースの論点No.292 拙速な出店、鈍遅な撤退

 「大量閉店から復活した『ミスタードーナツ』消費者を見方につけた“仕掛け”とは」20221128日、biz SPAフレッシュはこう題した記事を掲載しました。

 

 ミスタードーナツ(ミスド)は1971年に日本で初めて開店し、瞬く間に日本中に広がっていきました。しかし近年は苦戦を強いられており、2015年に1316店あった店舗が2022年には979店舗と25%ほど減少しています。

 

 もちろん、店舗数の減少は戦略的な不採算店舗の削減です。他社とのコラボなど売上を上げる施策も奏功し、1店舗当たりの売上高は底だった2017年から2022年にかけて1.4倍と収益性も大幅に改善しています。

 

 これまでドーナツ市場はミスドの独占状態でしたが、2006年にクリスピークリームドーナツ、2015年にはセブンイレブンが「セブンカフェ ドーナツ」を販売し各コンビニも追随しました。しかしいずれも長くは続かず、ドーナツの市場規模はすでに飽和状態だったことが考えられます。おそらく1000億円程度が上限なのではないでしょうか。

 

 さて、業界の先導者が多店化を推進し、さらに競合他社の参入により市場が飽和状態に陥るのはどの業界でも起こることです。近年ではそのペースが加速しており、流行のサイクルがこれまでの数倍になっている感覚です。

 

 流行ってしまった業界のプレイヤーとしては、進むも地獄、引くも地獄でどちらを選んでもプラスにならない状態になります。先行者利益を稼ぐだけ稼ぎあっさり撤退するか、それとも最後まで残り残存者利益を勝ち取るか…

 

 両極端ではないにしても、中途半端な立ち位置では競争に勝てず、企業の体力がいたずらに奪われるだけで何も残りません。

 

 弊社のクライアント(とあるサービスをチェーン店舗展開)でも、不採算店舗の削減は決断が非常に難しい問題でした。店舗には当然店長やスタッフも存在し、「儲からないからやめた」と無責任に投げ出すことはできません。

 

 また店舗に対し「情」が移っていることもあり、単に事務的な手続きだけで済む話ではないのです。結局、数字が相当厳しくなり、資金が回らなくなるまで決断できない方がほとんどではないでしょうか。

 

 多くの経営者は店舗拡大を簡単に決め、削減は後回しにします。これは完全に逆です。新たな出店については慎重に時間をかけ、削減については早めの決断をする。これが正しい優先順位です。

 

儲かっている時は調子に乗りがちで、何も考えず新規出店を決めてしまい失敗が多くなります。逆に、全く儲かっていない店舗なのに、ダラダラと撤退させる決断を先延ばしし続けると、当然ですが手持ちキャッシュが一気に目減りします。

 

 「拙速な出店」、「鈍遅な撤退」は店舗ビジネスの鬼門です。ダブルパンチで企業生命にかかわる打撃を受けることもあります。この場合、大半は経営者の責任です。経営者の皆さん。悪い時こそ決断を早くするようにしましょう。傷口が広がるのは思った以上に早いものです。その決断が会社の将来をつくるのです。

    今週の経営コラムを無料でお届け 無料メールマガジン登録はこちら
    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!

    コメント

    コメントする

    目次