
経営相談の現場では、多くの経営者が「まずは話を聞いてほしい」と思っています。資金繰り、採用、売上減…悩みは尽きません。ですが、こちらが単に話を聞くだけでは数字は動かず、社員も動きません(そもそも話も聞かない専門家もいますが)。
そこで私は、「コア‐スキルマップ」をもとに面談を設計しています。マップは横軸〈左側:スキル・ノウハウ/右側:思考・感情〉、縦軸〈上側:ビジョン実現・成長/下側:不足・減退〉で分けた4象限モデルです。
今日はこのフレームを使い、「聞く」から「成果」へつなげるコツをお届けします。例えば上司と部下との面談、あるいは専門家とクライアントとの面談など、あらゆる場面で活用できる内容です。
- 右下:カウンセリング——“安心”が土台
相談に来る経営者の多くは、右下(思考・感情×不足)の状態です。ここで大切なのは受容と共感。「とにかく不安だ」「誰にも言えない」という感情を傾聴し、心の荷物を下ろしてもらいます。数字の話を急ぐと逆効果。まずは“話せてホッとした”という心理的安全性を確保します。
- 左下:ティーチング——“型”を渡す
心が落ち着いたら、次は「やり方」の型(左下:スキル・ノウハウ×不足)を渡します。例えば補助金手続きなら、公募要領の読み方や事業計画フォーマットをA4一枚に整理し、「何から始めれば良いか」を明示します。ここでのポイントは “小さく早くわかる” 手順に絞ること。細かい理屈より、まずは一歩動ける成功体験が自己効力感を生みます。
- 右上:コーチング——“想い”に火をつける
型を手にした経営者は「やればできそうだ」と感じ始めます。ただし、手順だけでは長続きしません。ここで右上(思考・感情×成長)のコーチングを投入します。 「なぜその事業を伸ばしたいのか」「1年後どんな会社にしたいのか」と問いかけ、経営者自身のビジョンを言語化してもらいます。想いと行動が結び付くと、外からの指示がなくても自走する力が芽生えます。
- 左上:コンサルティング——“数値”で加速する
ビジョンが定まったら、最後は左上(スキル・ノウハウ×成長)のコンサルティング。市場分析、KPI設計、キャッシュフロー計画などデータとフレームワークで成果を最大化します。ここでのコツは 「数字は物語の裏付け」 と位置づけること。右上で描いた理想像を、左上で現実の数字に落とし込むことで、社員もステークホルダーも共感しやすい“筋の通った計画”になります。
- 象限を回遊させる
実際の経営は静止画ではなく動画です。経営者の状態は日々揺れ動きます。感情が揺れれば右下に戻り、手順に詰まれば左下に戻る。大切なのは「今どの象限にいるか」を面談ごとにチェックし、必要に応じて象限間を行き来させること。私は面談で「安心度」「手順理解度」「ビジョン明確度」「数字把握度」を把握し、都度最適なコミュニケーションを図ります。
- まとめ——バランスが成果をつくる
聞くだけでは動かない。型だけでも続かない。想いだけでも回らない。数字だけでも響かない。まず右下で心を受け止め、左下で型を示し、右上で想いを燃やし、左上で数字に落とす。4象限を順に、かつバランス良く回すことが成果への最短ルートです。
経営者自身がこの地図を持てば、どんな相談相手に何を期待すべきか、今足りないピースは何かが一目で分かります。自社の状態を4象限に当てはめ、次の一歩を選んでみてはいかがでしょうか。傾聴のその先に、会社が動き出す手応えをきっと感じられるはずです。

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