「顧客サポート不満で「やめた」46%、自動対応の精度に課題」2025年10月1日、日経MJはこう題した記事を掲載しました。
最新の調査によれば、カスタマーサポートに不満を感じた人は半数を超え、そのうち46%が実際にサービスをやめた経験があるといいます。特にチャットボットやFAQなどの自動対応では離脱率が高く、人による対応よりも顧客を失いやすい傾向が示されました。
不満の内容を見ると、人の場合は「待ち時間が長い」「たらい回し」「知識不足」、自動対応では「情報が見つからない」「回答の精度が低い」「人に繋がらない」が上位を占めています。
こうした結果を受けて「自動か人か、どちらが良いのか」という議論に向かいがちですが、実際にはどちらも不満の要因を抱えており、本質はそこにはありません。大切なのは、顧客をどう位置づけるかという企業の設計思想、すなわち理念と価値基準です。
理念を欠いた自動化は、顧客をコスト削減の対象としか見ず、結果的にスラッジやダークパターンを生みます。解約がしにくい仕組みや、電話がつながらない窓口など、大手企業でも日常的に遭遇するのが現実です。
短期的には解約阻止や費用削減に繋がるかもしれませんが、顧客にとっては「裏切られた体験」となり、長期的には不信とブランド毀損を招きます。
一方で、理念を持ち、それを設計に反映している企業は対応の仕方が異なります。AIは迅速かつ正確に情報を届ける補助役となり、人は共感や柔軟な判断を担います。顧客の自由を尊重し、解約の場面でさえ誠実に対応することで、むしろ残る顧客の信頼を強めることができます。
残念ながら、こうした好事例に日常生活で出会うことは多くありません。ホテルや百貨店でまれに「この人に対応してもらえて良かった」と感じる瞬間はありますが、それは偶発的で属人的な体験に過ぎません。むしろ、その希少性が際立つのは、普段の標準水準が低いからでもあります。
しかし、この“属人性”はAI時代においてむしろ価値を高めています。AIが標準化と効率化を担うようになったからこそ、人間ならではの創造性やコミュニケーションが顧客の心に強く残るのです。
たとえば「一歩先を読む」「状況に応じて提案する」「ちょっとしたユーモアで安心させる」といった対応は、AIが苦手とする領域であり、人にしか提供できない価値です。
中小企業にとっては、この属人性が大手との差別化の武器になります。大企業は効率化を徹底するがゆえに顧客接点が無機質になりやすい一方で、中小企業は「顔が見える対応」「経営者や職人が直接対応する」といった経験を提供できます。
これを単なる偶然に任せるのではなく、ビジョン(将来目指す姿)やミッション(使命感)といった理念に基づいて仕組みに取り込めば、属人性は再現性のある強みに変わります。
結局のところ、「自動か人か」という議論は枝葉にすぎます。理念なき自動化はスラッジを生み、理念ある設計は信頼を育てます。 そしてAIが一般化するこれからの時代においては、人の創造性とコミュニケーション力がますます顧客体験の核心として輝きを増していくでしょう。


コメント